「深い学び」の実現に向けて ――大田区にて第63回道徳教育研究会を開催

 8月24日(月)、池上会館(東京都大田区)において、当財団主催の第63回道徳教育研究会(大田会場)を開催しました。「道徳教育の充実をめざして」をテーマに、現職の教職員や教育関係者など51名が参加しました。(後援:文部科学省、東京都教育委員会、大田区教育委員会)

 初めに、主催者を代表して東京都モラロジー協議会副会長・青柳利夫氏が挨拶しました。青柳氏は、いじめや不登校、SNSの利用に伴う問題など、現代の学校現場が抱える課題に触れ、「子供たちを取り巻く環境が大きく変化する中、知識の習得だけでなく、一人ひとりの豊かな人間性や心を育てることが大切だ」と述べました。

 続いて、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・堀田竜次氏が、「道徳科における『深い学び』の実現に向けて」をテーマに講話を行いました。堀田氏は、次期学習指導要領の改定の柱として示されている「多様な子供たちの『深い学び』を確かなものに」について紹介。そのうえで、「考え、議論する道徳」という理念を実際の授業の中でどのように実現していくかが重要だと話しました。講話では、子供たちの多様な考えに目を向けながら授業を進める工夫や、考え方を引き出す板書、具体的な場面をイメージしやすくする教材や映像の活用など、授業のねらいを明確にした具体的な実践例について解説しました。

 講話に続いて行われたグループ協議では、参加者が9つのグループに分かれ、「道徳科授業の実践を話し合い、その課題と改善について」をテーマに、日々の道徳授業で実感していることや課題などについて活発に意見を交わしました。道徳科の授業を年間35単位時間、確実に実施するための工夫をはじめ、学年内の教員同士で教材を分担し、教師が交代で学年の各学級を受け持つ取り組み、子供の発言をさらに掘り下げて考えさせる方法、本音で語り合える雰囲気づくり、他教科や特別活動、日常の場面とのつながりなど、様々な実践について意見を出し合いました。参加者は、それぞれの経験や悩みを率直に語り合い、自校での実践を振り返りながら、授業づくりに生かせる工夫やヒントを共有し、新たな視点を得る機会となりました。

 協議の後には、堀田氏が講評を行い、本研究会をまとめました。「学級経営が整っていないと道徳の授業はできないと思われがちですが、道徳の授業を通して温かい学級をつくっていくくらいの気持ちで取り組んでほしい」と述べ、道徳の授業だけでなく、特別活動や他教科、日常の様々な場面につなげながら、子供たちの心を育てていくことの大切さを示しました。さらに、日頃から子供たちの姿をよく見守り、声をかけることによって、授業で育まれた心の成長を学校生活の中でも支えていくことが重要だと説明しました。また、体験的な学習を取り入れる場合には、体験そのものを目的とするのではなく、道徳科の目標を踏まえ、子供たちの心の成長につなげていくことが大切だと伝えました。

 参加者からは、「実践の仕方に正解はなく、クラスや子供の実態に合わせて、教師自身も楽しみながら取り組んでよいと分かった」「日々の授業づくりに生かせる具体的な視点を学ぶことができた」といった声が寄せられました。また、グループ協議についても「本音で語り合えたことが有意義だった」という感想が聞かれ、参加者がそれぞれの実践を振り返り、今後の授業づくりについて考える貴重な機会となりました。

 今回の研究会では、道徳科の「深い学び」を授業の中でどのように実現していくかについて学ぶとともに、現場の教員同士が日々の実践や悩みを持ち寄り、互いに学び合いました。講話とグループ協議を通して、授業をより充実させるための新たな視点や実践のヒントを得る有意義な機会となりました。