高橋 史朗

髙橋史朗143 – 日本発「四則和算」――「数式を解いていると、突然『翁』が現れた」

髙橋史朗

モラロジー道徳教育財団道徳科学研究所 教授

麗澤大学 特別教授

 

 

●国連が公認した“日本発”の「四則和算」

 今年の5月3日から5日までニューヨークの国連本部で開催された「第8回国連STIフォーラム」において、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻道徳感情数理工学社会連携講座の光吉俊二特任准教授が考案した「四則和算」が持続可能な開発(SDGs)につながる核心的な科学技術であると発表され公認された。光吉特任准教授の研究は、ロボットやAIに意志と道徳を持たせ、自分で判断できるようする「人工自我」である。

 このように、国連が「日本発」のオリジナルな文化・科学技術発信がSDGsの中核的な科学技術につながる点を認めたことは、国連事務総長が石清水八幡宮の田中朋清権宮司をSDGs文化推進委員長に任命したことと併せて極めて注目される。

 「四則和算」とは、電子コンピューター及び量子ゲートのために光吉氏によって発明された新しい算術で、東大で「学生がもっとも受けたい授業」になっているという。四則演算が足し算、引き算、掛け算、割り算の4つの演算から構成されるのに対して四則和算は、切算、動算、重算、裏算の4つの演算から構成されている。

 9月3日には東大で「日本学ユニバーシティ27周年」特別講演会並びにシンポジウムが、「AIの壁を超えて―― AE(人工自我)時代の進化論」をテーマに開催され大きな反響があった。これを踏まえて9月21日、光吉氏が私の自宅マンションに来られて「四則和算による戦争消滅と世界の動的平衡実現のための理論的枠組み」に関する画期的な理論を美しい数式で理路整然と説明され感服した。

 四則和算による世界平和の実現の理論的枠組みという発想のスケールの大きさと「美しい国日本」を新たな論理学(数式)に基づいて創造的に再発見し、対立を包み込む「天地の公道」「武士道」の原点に立脚して、ウェルビーイングの視点につなげていくことが求められている。

 

 

●「数式を解いていると、突然『翁』が出現した」

 特許を取得したAI・ペッパー君の感情モデルの開発に関わった光吉氏が提唱している、デジタルから量子ゲートを切り拓く数式は、伝統芸能で知られる「翁」を立ち上がらせる、舞台装置・面・様式と同じ仕組みで組み立てられているという。

 光吉氏が数式を解いていると、目の前に突然「翁」が出現したという。能楽師が能を舞っている時に脳の活動はどうなっているか、平成18・19年の「日本情動研究会」で京都大学の教授たちと論議したことがあるが、私はこの数式が世界を変えると実感した。この数式に「翁」を感じた者も少なくなかった。

 「翁」は能楽を鑑賞したことのない人にはよく分からないであろうが、量子力学の謎解きが神の紐解き、となっていることは実に興味深いことである。この四則和算が面白いのは、AIだけでなく人類の思考回路も変えるからである。

 私たちが普段当たり前のように使用している数式、特に割り算が生み出している、人々の思考回路に、対立のメカニズムが潜んでいると光吉氏は指摘する。これをとても分かりやすく説明している動画(作画:桐村里紗、監修:内海昭徳、数理制作:東京大学道徳感情数理工学他)があるので、ぜひ検索してほしい。

 ちなみに、桐村理紗氏は東大大学院の道徳感情数理工学講座の共同研究員並びに、人口最小の町・鳥取県江府町で地域創生を目指すフィールドワークに取り組む医師であり、『腸と森の「土」を育てる――微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)などの著書がある。

桐村理紗 著『腸と森の「土」を育てる』(光文社新書)

 桐村氏は、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」に「腸内環境評論家」として出演し、最新の分子栄養療法や予防治療、生活習慣病、終末期医療など幅広い分野で活躍している。

 人を含むこの惑星全体を最適化し、人と地球全体の健康を実現する「プラネタリ―ヘルスケア」地域モデル(プラネタリーヘルス:地球の健康、つまり、人類を含めた多様な生物が生命を維持できる自然環境を有し、地球上で人類が安全に有機的な活動ができる状態)の構築に取り組んでいる。量子ゲート数理「四則和算」を応用した人の意識OSアップデートとポストデジタル社会へのパラダイム転換による新たな文明の萌芽を描き、土と微生物を結節点に健康課題と地球課題を同時に解決することを目指している。

 これまでの科学は、四則演算や古典論理学のデジタルな思考の枠組みの中で発展してきた。しかし、物理学における量子論や相対論によって、従来のデジタルな思考の枠組みに限界が生じたのである。

 かつて拙稿「ホリスティック臨床教育学と鈴木大拙・西田幾多郎」や麗澤道徳教育学会創刊記念論文『道徳教育学研究』の拙稿などで論じてきた二元論や「排中律」や「矛盾律」の考え方に観察者の議論が入っていないことは、国家観などの課題を生み出している。

 これら従来のパラダイムに対して、四則和算は新たな演算子を用いることで量子のもつれを数式の中で扱うことができるようになっている。また、観察者の視点も扱えるため二元論や従来の対立を解消する手がかりとなる。

 まず四則和算の考え方と従来の従来の二元論の考え方について考察し、それらの議論を踏まえて、四則和算の枠組みを取り入れることで、現代世界で起こっている諸問題がどのように解決可能になり、Pax Japonica(日本の平和)の実現へとつながるかについて考えることが大切である。

 四則和算も思考全体の基盤を問い直すものであるから、四則和算について考える前に、既に持っている基礎的な思考形式を見直す必要があるが、四則和算について簡単にまとめると次のようになる。

 まず、切算(cut)によって対象が切り分けられる。この時に割り算と違って切り分けたものを消さずすべて数式の中で表現する。切算では不等分でも構わないから切り口が動く。これが動算となる。動算の段階で単に光吉演算子のスライダーが「動く」だけでスライダーが右に行った動きのベクトルと重ねることで時間が増え、関数が出てくる。

 

 

●「詩はあふれ出る“関数”」

 拙宅での2時間に及ぶ対談後、妻が詩集をプレゼントすると、光吉氏は感慨深げに読み進み、本の創りが気に入ったようで、「この詩は私から見ると『関数』だ」と表現した。頭で考えた詩はないと妻が伝えると、「私も全く同じだ」。溢れるように毎朝浮かんでくる数式を書き連ねているだけだという。

 私は当財団広報局長・浜島氏のススメで5月からほぼ毎朝“note”に執筆してきた。2時から5時半の間に一気に書き終えて、妻と明治神宮参拝・ラジオ体操・代々木公園巡りを2時間するのが日課になっている。9月に一時体調を崩したが、この日課だけは続けている。ホノルルマラソン、マウイマラソン、カウアイマラソン、ハワイマラソンという4大会走破するという夢があるからだ。

 光吉氏とは不思議な運命的な神縁に導かれて出会うべくして出会った。数少ないが、人生にはそういう出会いがある。この出会いを日本発のウェルビーイング及びSDGsの発信に生かしていきたい。

 環境学者ヨハン・ロックストロームが提唱した「SDGsウェディングケーキモデル」は、「環境・生物圏」「社会圏」「経済圏」の3階層でSDGsの目標を分類している。一番下に環境・生物圏があり、その上に社会圏、一番上に経済圏がある。

 つまり、健全な地球環境や生物の基盤があることで、社会や経済という人や文明の健康が成り立っている。人間は唯一、環境をつくることができる生きものである。それ故に、人が意識を持って再生する主体となり、人類の健康のみならず、地球・社会の健康に貢献していく必要がある。

 これがSDGsの17個目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」のために必要な考え方で、これによって人と地球の健康「プラネタリーヘルス」が実現する。

*  *

 道徳の要は、特に割り算に潜んでいる対立のメカニズムを止揚する「共感力」と「仲間らしさの共有」であって、この仲間の範囲を広げることが争いを減らすことになる。「矛」を止めるという意味がある「武士道」によって戦争を抑止し、平和実現を目指すのが日本の天命である。

 どんなグループにも“掟”があり、絶対的な“掟”と相対的な”掟”に分かれている。あらゆる宗教に共通するのは、「仲間を殺すな」「仲間を騙すな」「仲間から盗むな」という3つの“掟”である。これは全人類に共通する絶対的な”掟“と言える。

 その上にあるのが相対的”掟“で、何曜日に休むのか、何を食べてはいけないのか等というのがこれに当たる。大事なのは「仲間らしさ」をつくるためにこの二つの”掟“を分離し、縦軸の絶対的”掟“の「共通性」と横軸の相対的”掟“の多様性を認めることである。それによって仲間の範囲を広げることができるからである。

 「四則和算」の社会的実装をする持続可能な人材育成プラットフォームを構築するための集中講義が本年度から公開され、光吉氏を中心とする東大大学院道徳感情数理工学講座の共同研究員らが講師陣を務めている。

 8月には「四則和算」イントロダクション・コースが設けられ、光吉氏が①四則和算の基礎、新谷栄悟氏が②反宇宙モデルの考察、朝長康介氏が③四則和算の応用――量子ゲート方式や仮想自我の応用事例について講義を行った。9月には東大で「四則和算サマースクール」も開催され、8割以上の講義に参加した学生には入会資格が与えられる。

 東大や灘高、全国の塾に広がりつつある「四則和算」の新たな先駆的取り組みを突破口にして、「SDGsからウェルビーイングへ」をテーマとする大阪万博の開催に向けて、国連が公認した「四則和算」という美しい数のリズムを世界に発信し、数式と共に「翁」が出現する「道徳感情数理工学」の世界に人々を誘いたい。道徳科学研究所の「ウェルビーイング教育研究会」にも光吉氏をお招きして、道徳とウェルビーイング、SDGsとの関係についても論議を深めていきたい。

 

(令和5年9月30日)

 

※髙橋史朗教授の「note
https://note.com/takahashi_shiro1/ 

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