髙橋史朗

髙橋史朗 32 – 東日本大震災に寄せられた台湾からの和歌とメッセージ

髙橋史朗

モラロジー研究所教授

麗澤大学大学院特任教授

 

 

 東日本大震災から10年を経た、テレビの特集番組を見ていると、大地震の数日後、妻とタクシーを貸し切って被災地をくまなく回った時の光景が走馬灯のように思い出される。大地震が起きたのは、都内で親学推進協会の理事会を開催している時であった。交通手段がなくなったため、1階ロビーのソファーに横たわりながら、巨大なスクリーンが映し出す悲惨な映像を一晩中見ていた。あの悲惨な映像は脳裏に焼き付いていて生涯忘れられないものとなった。

 

 

●松山から全国に広がった「親守詩」大会

  被災地の学校の教師には私の教え子もいて、すぐに連絡した。被災地の気仙沼では、私が提唱して全国に広がった「親守詩」(子供が上の句、親が下の句を詠む)大会が毎年開催されており、私が審査委員長をさせていただいている。開催のきっかけは、東京青年会議所の主催でお台場海浜公園(東京都港区)でのこと。被災地から東京に避難されてきた方々をお招きして気仙沼と中継を繋いだイベントで、私は震災に関するパネルディスカッションにパネラーとして参加し、六本木を歩いている親子に即興で親守詩を作ってもらった。

 その後、全国で「親守詩大会」が開催され、浜離宮朝日ホールで開催してきた全国大会の受賞作品は共催者である毎日新聞が1面の半分の紙面を割いて毎年掲載してくれた。「親守詩」大会の口火を切ったのは愛媛県の松山青年会議所であった。第1回大会は「歌って出来る親孝行」と書かれたTシャツを参加者全員が着て(講演者である私も着た)、自らが作詞、作曲した「親守歌」をギター片手に歌うイベントであった。

 反抗し親から勘当された若者が親を想う気持ちを取り戻し、涙ながらに歌うイベントは3年続き教育委員会も後援してくれた。この大会に参加した香川県のモラロジーの若者が香川県に「親守詩」大会を広げ、香川県では教育委員会が全面的にバックアップして、県内の全ての小中学校で取り組む全国一のモデル県となった。

 

 

●台湾から寄せられた「大震災祈祷平安歌文集」

 大震災から3か月後に、私が日華教育研究会の副会長をしていた時、台湾の友人の先生から「東北関東大震災祈祷平安歌文集」が送られてきた。この歌文集を読んで、台湾から多くの支援金が日本に送られてきた理由が分かった。台湾の方々が大震災を他人事ではないと受け止めていただいたことが、次の和歌を読めばよく分かる。世代によって仮名遣いが異なる点はご容赦願いたい。

〇国難の地震と津波に襲はるる祖国護れと若人励ます
〇筆談で「日本どうか」と聴く爺の手を取りぎゅっと唇噛み締む
〇大なゐに津波にも負けぬ日の本の雄雄しき友どち立ち直れかし
〇神風の生まれ代りか原発を護る勇士らに神の加護あれ
〇東北の大震災に日本の武士道復帰の兆しを見たり
〇国挙げて未曽有の国難対処する大和魂存亡の秋
〇荒れ狂う津波に退避報道す大和女の勲雄雄しき
〇大津波「退避」を叫ぶ報道の大和をみなに妻涙ぐむ
〇世界中が見ている応援していると伝えてあげたき避難所の人に
〇恐怖不安寒さに耐えて秩序ある日本といわれ悲しくもうれし
〇巨大なる地震と津波日本の対処の秩序の世界の目集う
〇震災後国を挙げての節電に見らるる日本の智慧と自律は
〇福島の原発災害放射能五十の勇士ら命を賭くる
〇福島の身を顧みず原発に去りし技師には妻もあるらん
〇大地震に痛む心を慰むる台湾人の祈る姿は
〇原子炉の修理に赴く男の子らの「後を頼む」に涙止まらず
〇大津波に呑まれて消えし方の為献金箱に「飲代」入れる
〇おしんに似た辛抱強き東北人艱難汝を玉にすと謂う
〇鯉のぼり支援の風に泳ぎだし励ます如し頑張れ日本
〇救済の食事に深ぶか頭をさぐる被災者なるに礼節ゆかし
〇未曾有なる大震災に見舞われど秩序乱れぬ大和の民ぞ
〇日の本の放射能漏れ発電所に踏みとどまれる勇士らを称ふ
〇世も揺らぐ日本の国難「頑張れ!」と涙ながらの台湾の声
〇避難所の夜は寒かろう不安だろう大震災を凌ぐ人らよ
〇配線を乗り越えて来し日本なり震災復興遠くにあらず
〇国被う災厄かくも大なれど我信じいる大和の民を
〇原発にいざ立ち向かう武士たちよどうかご無事に生きてくだされ
〇日本人よくじけないで悲しみの倍の喜び返ってくるまで
〇「我が友よ日本は必ず立ち上がる」日本語族の想いよ届け
〇一点を見つめ手の杖持ち直し「日本信ず」と目をうるませて
〇被災地に何かをすべきと思えども非力な我は寄付と節電
〇美しき心のふるさとくずれ落つサイコロのよう只黙祷を
〇神あらば心の祖国の災難をとくとく鎮め幸ぞ賜れ
〇再三の国難に遭いし我が友よ春はそこまで近づきしものを
〇冬されば春遠からじと人の言う日本の友よいざ団結のあれ
〇大地震津波襲える友邦に両手を合わせ無事を祈らん
〇未曾有なる大災難に秩序正し日本民族は世界の典範
〇テレビ見て心痛みただ涙ぐむ一日も早く復国あれかし
〇幾度も電話にて無事確かむる昔懐かし日の本の友へ
〇黙々と天災地変に耐え抜きて復興に励む人ぞ美わし
〇わが涙悲涙と感涙こもごもに被災にめげず生き抜く人ら
〇みちのくの大地震津波の石巻卒寿の独り居祖母は如何にと
〇山をなす瓦礫の隙間に咲き匂うソメイヨシノの「頑張れ」の声
〇「散る桜残る桜も散る桜」散るまで頑張ろう桜の男の子
〇大地震原発事故の国難に従容として立ち向かう日本
〇志して励めよ復興美しの日の本の国不屈の魂
〇大地震相次ぐ津波「艱難汝を玉にす」頑張れ!日本
〇悲惨なる災害なれど日本の友よ畏れず出せ底力
〇涙のみ震災に挑む日本の友よしっかり頑張れ復興近し
〇天災に負けずくじけずわが愛友よ涙も見せず鬼神をば泣かす
〇日の本の被災の民に神々の御加護あれかしとひたすら祈る
〇何もかも失われても勇ましく立ち上がる人に賛歌惜しまず
〇雪の夜は如何に過ごすや校舎にて竦む避難者よ我も眠れず
〇団結と正義名高き日の本に神の御加護の永遠に絶えざり
〇未曽有なる苦難の冬過ぎ春近し復興の日の早きを祈りて
〇遠き日の母国日本の被災地に桜早よ咲け幸ともないて
〇美しき祖国の沿海呑みこみて大津波すべてを覆い尽くしぬ
〇この先の長き苦難の道の辺に咲く四季の花やさしくあれかし
〇宮城への関心と支援湧き出づる人間愛に国境はなく
〇未曽有なる国難凌ぐ災民を鼓舞するがに咲く八重櫻花
〇祈りなば神の怒りは鎮まらん天災地変に神意のあらば
〇さまよえるはらから如何に居ますらん今宵の月を如何に眺めん
〇あたたかき諸国人の真心はPray for JAPANの一語一語に
〇地震鎮む要石をば据え直せ鹿島の神よ万古不動に
〇悲惨なる地震と津波の日本よ挫けず負けるな立ち上がる日を
〇只祈る頑張れ復興の早かれと日本はアジアの良き盟友ぞ
〇わが友よ勇気を出して立ち向かうあしたはきっとそよ風が吹く
〇鰯雲東日本へ泳ぎゆけ慰め与えよ「天」の声を
〇新高より富士に向かいて絶叫す立ち上がれ日本頑張れ日本
〇「泣きません前に向かって歩きます」少女の一語に光を見たり
〇「ありがとう台湾」というこの言葉永久に伝えん子へ又子へと

 

 

●台湾の大学生からのメッセージ

 最初の和歌は、私のゼミ生の合宿や卒業旅行でお世話になった蔡昂燦先生の作品で、台湾のホテルで講演していただいたが、謝金は受け取られず、逆に豪華な夕食を御馳走していただき恐縮した。ゼミ生を連れて李登輝元総統の表敬訪問をした折も、元総統はゼミ生代表の挨拶の内容に感動され、30分の予定が一時間半に延長され、1時間にも及ぶ講演をしていただくことになった。

 台湾出身の明星大学大学院の教え子が台湾の大学教員になり、結婚式に招かれて台湾に行ったが、日本の結婚式とは異なり、招待者が多いことに驚いた。式後に若者を引き連れてカラオケ店に行き、帰りに支払いをしようとすると、教え子の弟(大学生)が血相を変えて駆け寄ってきた。「ここは台湾ですから、私が支払います」といって譲らなかった。「そんな堅いこと言わずに」といって押し切ろうとしたが、台湾人のプライドがひしひしと感じられて引き下がった。

 台湾の男子大学生には同様の気骨が感じられたので、ゼミ合宿や卒業旅行では必ず日本のことを専門的に学んでいる台湾の大学を訪問し、学生交流を深め、希望者を日本に招き、それがきっかけとなって日本の大学に留学したり、結婚したカップルも生まれた。そうした台湾の大学生からも大震災に寄せた次のようなメッセージが送られてきた。

<日本と台湾の関係はずっと友好的です。台湾の「921大地震」の時、一番早く手を貸してくれたのは日本でした。赤十字会が起こしたテレビでの義援金募集会では、4時間だけで、7億8000万も募集しました。僕たちは日本の災害が心配で、誰もが手助けをしたいと思いました。僕たちはずっと君の傍にいて、日本の再建を望んでいます。もう一度輝く日本を見せてもらいたいのです。日本よ、君は1人ではない。台湾はずっと日本の傍にいます

<日本人の災害に対する態度を見て、はっきりと分かったことがあります。それは、贅沢をせず、毎日を大切にする事です。災害の中で、日本の国民は団結力と意志力を見せました。悲しみの中にあっても厳しく、緩みのない生き様を見せました。苦しみに耐え、お互いに助け合い、文句も言わずに、冷静に災害に対処していました。秩序を守ってコンビニで物資をもらったり、電車を待っていました。これらのことは、世界中の人々に得難い何かを与えました。まるで桜のように凛としている大和民族は、団結して、誇り高く、再び立ち上がることでしょう。日本の友達よ、一緒に頑張りましょう>

 

(令和3年3月16日)

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