西岡 力-道徳と研究8 総選挙圧勝で韓国はどこに向かうのか
西岡力
モラロジー研究所教授
麗澤大学客員教授
●ネットには時代錯誤の反日ポスターが……
4月15日の韓国総選挙で文在寅政権与党が圧勝した。300議席のうち与党単独で180を占めた。文在寅政権は3分の2が必要な改憲以外何でも出来る絶対多数を握ったことになる。
文政権は残った2年の任期でこれまで進めてきた政策をより力強く推進するだろう。反共自由民主主義、市場経済、法の支配といった国是が大きく揺るがされていくことになる。ベネズエラへの道を進むとある保守派知識人は語っている。
慰安婦問題で20年以上反日運動を続けてきた尹美香[ユン・ミヒャン]挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会。現在は、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯、略称正義連に改称)代表が与党の比例上位で当選した。文在寅政権側は今回の選挙の争点に親日派処分を持ち出した。「未来統合党は安倍政権を擁護し、日本には何の批判もできない」と訴えた。街には「投票で百年親日清算」などと書かれた横断幕が多数掲げられた。ネットでは「韓日戦」と題する時代錯誤の反日ポスターが出回った。
ポスターでは向かって左側に彼らが称賛する独立運動家らの顔が青色をバックに多数掲げられている。右側には「悪い日本人」として豊臣秀吉、少女を強制連行する日本軍人、東条英機、安倍晋三などと朝鮮併合に賛成した李朝の高官の李完用の顔が赤色をバックに掲げられている。与党のシンボルカラーが青、野党のシンボルカラーが赤だから、野党は親日派の仲閒だというメッセージになる。
親日派の部分の一番まん中よりにタテに赤い漢字で「朝鮮中央東亜自由韓国」と書かれている。これは朝鮮日報、中央日報、東亜日報と自由韓国党(野党未来韓国党の前身)も親日派に所属するというメッセージだ。つまり、野党は民族の裏切り者である李完用と同じ親日派だから選挙で審判せよというメッセージがここに込められている。
●これまで親日発言を処罰する法案は阻止されてきたが……
昨年夏、反安倍デモを組織した左派反日団体は選挙で処断すべき親日派として黄教安[ファン・ギョアン]未来統合党代表、沈在哲[シム・ジェチョル]同党院内代表、羅卿瑗[ナ・ギョンウォン]同党前院内代表ら8人の野党候補を指定して落選運動を公然と行った。8人のうち6人が落選してしまった。
落選運動を展開した運動体は、親日清算法制定を求めている。(1)親日発言処罰法(2)親日派子孫財産没収法、⑶国立墓地埋葬親日派遺体移送法、⑷親日派受勲取り消し法だ。
落選運動のためのネットサイトでは、処罰するべき親日発言の例として、昨年出版されて日韓でベストセラーになった『反日種族主義』の著者の一人である李宇衍博士がジュネーブの国連人権理事会会合で戦時労働者は奴隷労働をさせられていないなどと発言している場面の映像や、『反日種族主義』を講義で取り上げ「慰安婦は売春の一種」と語ったことで挺対協から名誉毀損で刑事告発された大学教授の映像がアップされている。
これまでも親日発言を処罰する法案は何回か提案されていたが、野党と良識的市民らの反対で成立は阻止されていた。しかし、与党が大多数を占めるこれからの国会ではこの法案が通ってしまうかも知れない。そうなれば、『反日種族主義』著者である李栄薫[イ・ヨンフン]元ソウル大教授、李宇衍[イ・ウヨン]博士や毎週、日本大使館前で慰安婦像撤去を求めるデモをしている良識的市民らが逮捕されるという悪夢が実現しうると、心配している。
(令和2年4月30日)
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