西 鋭夫

西鋭夫のアメリカ通信7 国家の興亡

西 鋭夫

スタンフォード大学フーヴァー研究所 小川忠洋フェロー

モラロジー研究所 特任教授

 

●帝国も80年で終わるのか?

 英国で始まった産業革命から歴史の流れが早くなった。帝国の台頭から崩壊までの時間が短くなった。「人生80年」と言われるが、帝国も同じ宿命を抱えているかもしれない。
 大日本帝国は、1868年の誕生から1945年の崩壊まで、77年。
 残酷な共産党独裁のソ連帝国は、建国された1922年から1991年に崩壊するまで、69年。
 明治維新が進化の師匠と崇<あが>めた大英帝国は、地球上に大植民地を作り、富める帝国として「世界は我のモノ」と振舞っていた。英国が清国へ仕掛けた第一次アヘン戦争(1840〜1842年)と第二次アヘン戦争(1856〜1860年)で莫大な賠償金と香港を分捕った。だが、各地の植民地で独立戦争が勃発し始めた時に、ドイツ帝国を相手に第一次世界大戦に巻き込まれ、終わりなき消耗が命取りとなり、第二次世界大戦でもドイツと戦い、米国に助けてもらってやっと勝利したものの、大英帝国はすでに終わっていた。1997年、強い中国に脅された英国は、渋々と香港を返す。1860年の第二次アヘン戦争の勝利を大英帝国の頂点とし、1945年の第二次世界大戦の勝利を英国終焉の始まりと見れば、75年。現在、英国には大帝国としての気概もプライドも残っていない。
 大英帝国の遺跡は、1776年に英国からの独立を勝ち取った米国に引き継がれてゆく。米国はアジアへもっと進出したいが、南北戦争を戦っていたので、海外へ目を向ける余裕なぞない。1861年から1865年までで、米国史上最多の戦死者(80万人)と数百万人の戦傷者を出した

 

●米国、そして中国はどう生き残るのか

 米国は、第一次と第二次世界大戦で勝利を収め、世界帝國として君臨するが、戦争国家になっていた。朝鮮戦争からヴェトナム戦争へ、そして現在も中東の砂漠で終わりなきゲリラ戦を戦い続けている。20年間も続いたヴェトナム戦争が米国の敗北で1975年に終わった時、米国の経済は激痛の打撃を受けており、国民の心理に大きく深い傷跡を残した。富国強兵の姿勢を変えられない米国に「富・戦費」がなくなってきた。だが、戦争を止められず、火薬庫のような中東へ進軍する。1945年から世界の覇者として振る舞ってきた米国は、「帝國」として生き残れるか。歴史の摂理<せつり>を覆<くつがえ>すことができるのか。
 世界に輝く中華文明を作り上げた中国大陸で、中華人民共和国が1949年に共産党独裁の国家として建国された。13億人の人口を抱え、近年まれに見る経済大発展をしつつ、世界大国の夢を果たすため軍備拡充に巨額の金を使っている。中国からの輸入品が太平洋からの津波のように米国へ押し寄せて、すでに40年。
 トランプ大統領と米国民は中国の食い物にされていると怒っており、貿易戦争や覇権闘争も辞さない剣幕だ。近代史上、共産党独裁が長く続いたことはない。中華帝国が建国から80年間続くとして、2025(令和6)年が厄年の始まりになるかもしれない。
 長い間鬱積<うっせき>している日本国民の不満や怒りが沸騰するのは、時間の問題だ。日本国民は学問が好きで頭が良い。発言をしなくても、深く考えている。日本のエリートたちが国民の沈黙を自分たちへの「賛成票」と読み間違えると、どんでん返しの「無血革命」を起こされる。歴史に例外はない。

 

西鋭夫公式サイトPRIDE and HISTORY
http://www.prideandhistory.jp/

 

 

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