西岡 力

西岡 力 – 道徳と研究5 偶像化される自称被害者

西岡力

モラロジー研究所教授

麗澤大学客員教授

 

 

●誰のためになったのか? 金学順さんを巡る慰安婦扇動行為

 1991年8月14日に初めて韓国で名乗り出た元慰安婦、金学順[キム・ハクスン]さんについて書いてきた。このコラムで書いてきたように、彼女は強制連行の被害者ではなく、貧困による被害者だった。貧困の結果、母親がキーセン検番主人に前借金してその返済のため主人に連れられて中国にある日本軍慰安所で働かされたのだ。

 朝日新聞などが彼女を「女子挺身隊として連行された被害者」だとウソの記事を書き、日本人弁護士と反日運動家らが彼女を原告にして日本政府を訴える裁判を起こし、日本各地で彼女の講演会を開いて、日本と日本人の名誉をおとしめた。1992年から、私はそのウソに対して事実を一つ一つ指摘して反論してきた。

 しかし、日韓の反日運動家らは私の反論をあたかも何事もないかのように無視し、金学順さんを偶像化していった。金さんは1997年に亡くなった。彼女の胸像が、ナヌムの家と称する金さんら元慰安婦が集団生活をし、訪れる日韓の若者らにウソを交えた証言を伝える施設の中庭に立てられた。

 彼女が亡くなった後、「初めて名乗り出た勇気ある元慰安婦」という彼女への称賛は次第に高まっていった。2000年に東京で開かれた「アジア女性法廷」と称する反日茶番劇(法廷と称しながら弁護士がおらず、一方的に昭和天皇を慰安婦強制連行やレイプなどの責任者として「有罪」とした)でも、最初の証言者として名前が出た。

 2012年、第11回「旧日本軍による性奴隷制問題の解決に向けたアジア連帯会議」の決議で、彼女が最初に記者らに会見したとされる8月14日が「慰安婦メモリアルデー」になった。そして、なんと2018年には韓国文在寅政権が同日を国家記念日に指定した。

 2014年、朝日新聞が自社の慰安婦報道を検証し、吉田清治証言については記事を取り消し謝罪した。しかし、金学順さん報道については、最初は、ねつ造はなかったと開き直り、私をはじめとする多くの専門家に反論されて、女子挺身隊で連行された事実はないと小さく訂正を出した。しかし、謝罪はなかった。

 2017年、米国にも彼女の銅像が立った。中国系団体によってサンフランシスコ市の市立公園に立てられた慰安婦像は、韓国、中国、フィリピンの少女の像を、金学順さんの銅像が見つめているという構図になっている。最初に名乗り出た勇気ある証言者として中国系団体からも称えられたのだ。

 ウソも百回続けると本当になる、という全体主義の宣伝扇動術が金学順さんを巡る慰安婦扇動でも通ってしまったのか。その結果、どれだけ多くの日本人が韓国に失望し、どれだけ多くの韓国人が日本を憎んだのか。それを喜んでいる政治勢力は誰なのか。絶望的な思いを拭えなかった。

 

●慰安婦像撤去を求める韓国良識派のデモが始まった

 しかし、真実は強い。昨年、李栄薫[イ・ヨンフン]・前ソウル大学教授らが、「慰安婦は日本軍の管理下にあった公娼だ。朝鮮王朝時代は両班という支配階層が身分の力でキーセンや奴婢という被支配階層の女性の性を搾取した。日本統治時代に公娼制度が導入され、当初は日本人が日本から連れてきた女性の公娼を利用していたが朝鮮経済の近代化が進むにつれ朝鮮人が多数利用するようになり、それにつれて朝鮮人公娼も増えた。慰安婦制度は公娼制度を戦地に持ち込んだものだ。韓国独立後も、韓国軍と在韓米軍には慰安婦制度が維持された」という学問的主張を『反日種族主義』という本にまとめて韓国で出版し、10万部を超えるベストセラーになった。日本語訳が日本でもベストセラーになっているが、もともと韓国人に歴史の真実を伝えるために書かれた本だ。

 そして、ついに、慰安婦像撤去を求める韓国良識派のデモが始まった。実は、ソウルの日本大使館前では1992年以来、毎週水曜日に金学順さんをはじめとする元慰安婦と支援者が「水曜集会」と称する路上反日行動を続けてきた。その集会の千回目を記念して2011年12月に大使館前に慰安婦像が建てられた。昨年12月4日、水曜集会が行われている同じ時間にそのすぐ近くの路上で「慰安婦像撤去、水曜集会中止」を求めるデモが始まったのだ。その中心人物が「反日種族主義」の共同執筆者の1人である李宇衍[イ・ウヨン]・落星台経済研究所研究委員だ。李宇衍氏らは「慰安婦像と戦時労働者像設置に反対する会」を結成して様々な活動を行ってきた。

 12月4日の慰安婦撤去デモでは、金学順さんがどのような経緯で慰安婦になったのか、本人が語った証言が朗読された。「事実を知りましょう。強制連行ではなく貧困の結果、慰安婦になったのです。本人の証言を読み上げます」李宇衍氏らは落ち着いた語調で金学順さんの証言をくり返し朗読した。

 ただ、李宇衍氏らを囲み「売国奴」「日本の手先」「親日派」「恥を知れ」などと叫ぶ反日運動家らはその朗読に一切耳を傾けない。取材に来ていた韓国の記者らもその朗読を無視した。李宇衍氏らは慰安婦像が撤去されるまでどのような妨害があっても抗議行動を続けると宣言した。12月11日には持っていたプラカードが蹴られて破損し、12月18日には李宇衍氏が顔面を殴られた。それでも黙々と、李宇衍氏らは真実を掲げてウソと戦い続けている。李宇衍氏らが12月4日に発表した声明全文を全訳した。

 

慰安婦像撤去と水曜集会中断を求める声明

 慰安婦像は歴史を歪曲して韓日関係を悪化させます。 慰安婦像は「強制的に連れて行かれた少女」という歪曲されたイメージを作って国民にこれを注入・伝播しています。

 

 しかし実際の慰安婦は10代初めの少女ではなく、平均的に20代半ばの成人でした。 そしてほとんどの就職詐欺や人身売買を通じて慰安婦になりました。 彼女らを慰安婦にした主役は日本官憲でなく、親戚と近しい朝鮮人知人たちでした。

 

 水曜集会に参加した幼い小学生の少女がマイクをとって「私のような年齢の少女が日本によって連れて行かれた」と話すのは慰安婦像がどれくらい我が国民、特に精神的、身体的、情操的に未成熟な幼い生徒たちにまで深刻に歪曲されたイメージを植え付けるのか見せつける証拠です。

 

 慰安婦像は絵画や映画などの2次創作物と結合し、歪曲された情緒と歴史認識を爆発的に伝染させています。 慰安婦が日本官憲によって強制的に戦場に連れて行かれた存在というイメージを形成して、特定の政治集団の不純な政治メッセージを宣伝することに悪用されています。

 

 慰安婦像は韓国人が崇拝する偶像になってしまいました。 数多くの公共の場所に展示され無差別な大衆に無理に情緒的共感を強要します。 冬ならマフラーと手袋をさせ厚いショールをかけるのもこのような情緒的強要の一環です。 さらに慰安婦像をバスにのせて市内を運行しました。

 

 知的に情操的に成熟した大人たちが自分の両親にもしない丁寧なお辞儀を慰安婦像に捧げます。 大韓民国は朝鮮時代よりさらに後退した偶像崇拝の神政国家へと後退しています。 慰安婦像はそのような退行の最も鮮明な象徴です。

 

 旧日本大使館の前にたてられている慰安婦像は不法造形物です。 2011年設置当時に挺対協(現正義記憶連帯)は管轄区庁の許可を得ないで自分勝手に像を設置しました。 政府は反日種族主義に便乗したり、それを助長する大衆追従的で人気迎合的な態度でこの像の設置を追認しています。

 

 市民団体らと大学生が2016年に釜山の日本総領事館の前に奇襲的に設置した慰安婦像も同じことです。 これらの像「外交関係に関するウィーン条約」 22条に規定された「公館の安寧の妨害または、公館の威厳の侵害」に該当する設置物です。

 

 1992年から30年近く開かれている水曜集会も歴史を歪曲して韓日関係を悪化させます。 この集会は像を崇拝する霊媒師の厄払いであり、歴史を歪曲する政治集会です。 全教組所属などの一部教師たちは「現場学習」という美名の下、父兄の無関心を利用して純真な生徒たちを歪曲された政治・歴史意識を注入する集会に導いています。 中高生だけでなく低学年の小学生の子供さえ動員対象です。

 

 水曜集会は事実上不法集会です。 「外交関係に関するウィーン条約」により外交公館から100メートルの地域のデモは禁止されます。 しかし水曜集会は記者会見の形式で毎週開催されています。 あらゆる口実を動員して韓日関係を悪化させて大韓民国の安保と国際的地位を墜落・傷つけるのがその本当の意図でないのか疑うほかありません。

 

 慰安婦像は撤去されなければならず、水曜集会は中断されるべきです。

 

 私たちは私たちの正当な要求が実現されるその日まで退かないで戦います。

 

2019年12月4日
慰安婦と労務動員労働者像設置に反対する会
反日民族主義を反対する会
韓国近現代史研究会
国史教科書研究所

 

 

12月11日、慰安婦像に反対するデモをする李宇衍博士らは暴行を受けた。
(写真:慰安婦像と戦時労働者像設置に反対する会Facebook)

 


 12月11日午後、日本大使館前慰安婦像付近で抗議行動をしている李宇衍博士たち。向かって右が李宇衍博士。李宇衍博士が持つ看板には左上から「歴史歪曲、反日助長、慰安婦像撤去せよ」、右上から「歴史歪曲、反日助長、水曜集会、中断せよ」と書かれている。

 


①~④ 何者かが李宇衍博士に暴行を加え看板を蹴り破った。
⑤ 破られた看板をつないで決然と抗議を続ける李宇衍博士。

 

 

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