渡邉直也 – 中学校の実践発表 『キャラバン方式』の授業
伊勢原市立伊勢原中学校 教諭 渡邉 直也
本校では、担任だけでなく、学年所属の全教員で担当した『キャラバン方式』で道徳の授業を行っている。これは、教員によって指導の格差があることや形式的な指導になっているために道徳授業の特質を活かされていない課題があり、本校での「道徳教育」の課題を改善していく必要があると考えたためだ。
(1)具体的な取り組み
①教材(主題)の選定
学年の現状を踏まえ、道徳担当で教材を選定する。教材は主に神奈川県版資料集『きらめき』と文部科学省『私たちの道徳』から選定している。
②グループ分け
担当を中心に、学年所属の教員を経験年数や年齢を考えて3人組に分ける。
③教材(主題)の担当決め
選定した教材をどのグループが担当するか話し合う。ただし、グループ内で話し合い、主題は変えずに教材を変更してもよいことにする。
④授業準備
各グループで指導案を作成し、それを基に生徒用プリントやワークシート、黒板掲示物などを作成する。
⑤『キャラバン方式』授業
授業にあたっていない教員は他の教員の授業参観を行う。基本的に同じグループの授業を参観するが、他のグループの授業参観もする。ただ参観するのではなく、生徒と一緒に考えたり話し合ったりして、一つの授業に様々な教員が関わっている。
(2)授業の進め方
一つの教材(主題)で2コマ(2時間)使って授業をする。1コマ目と2コマ目は一週間程度、間を空けている。
①1コマ目の授業
資料を読み(教師が読み聞かせー生徒は黙読)、生徒が自分の考えや意見をワークシートに書く。
②2コマ目の授業準備
生徒のワークシートを見て、2コマ目の授業の組み立ての参考にする。このとき、グループの教員にも相談する。また、必要に応じて掲示物なども作成する。
③2コマ目の授業
1コマ目に出た生徒の考えや意見を全体で共有する時間にする。班活動(基本4人班)やワールドカフェ方式での発表、全体での発表や討議など状況に応じて使い分ける。また、生徒には他人の意見で気になったところや、他人の意見を聞いて自分の考えが変わったところを赤ペンで書かせる。最後に、授業の反省を書かせる。赤ペンで書かせるのは、自分のものと他人のものとの区別をつけるためである。
(3)授業を振り返って
○『キャラバン方式』で授業を行うことで、「教員1人で授業をする」のではなく、「学年の教員全員で授業をする」という意識が出てきている。
○授業のアドバイスをしたり他教科の授業のやり方を真似したりと、今まではなかったことが行われるようになった。
○『キャラバン方式』で授業を始めてからは、より多くの教員が生徒の情報交換をするようになり、様々な視点から生徒を見ることができるようになった。
○来年度実施の道徳科の評価についても、たくさんの教員が生徒に関わり、様々な視点から生徒を見ていくようにする。
<『モラロジー道徳教育』NO. 153 平成30年12月1日発行より>