笑顔で待てる母の姿に
出会った親子の風景に、私は爽やかな感動をもらいました。三十代前半かと思えるお母さん、幼稚園のバッグを背負った五歳ぐらいの女の子。園からの帰り道のようでした。その二人は、楽しそうに手をつないで、談笑しながら歩いています。人通りも少なかったことも幸いしてか、少し距離のあるところから見つめつつ歩いていても、その二人の雰囲気がよく伝わってきます。昼過ぎのどちらかというと慌ただしい時間でしたが、二人は違っていました。
歩道はというと、秋風に散る落ち葉が道の片隅に吹き寄せられて、散らばっています。手をつないで歩いていた女の子が突如、「お母さんちょっと待ってね」と言って、落ち葉のところに駆け寄り、一枚二枚と、いちょうや紅葉の葉を手に拾い集めだしました。二、三枚拾っては、また別のところに止まったり、歩いたりの道草風景です。お母さんが、「○○ちゃん、いい葉っぱありましたか」と、笑顔で声をかけ、女の子は無心に集めています。少し歩いてはまた座って拾っていると、「お母さん、この葉っぱ、ほんとに美しいでしょう?」と母の元へ。子供はとても嬉しげ、満足げです。
私は、このお母さんの姿を見ていて、偉い人だなぁと感心しました。優先順位は子供の心の安定第一。しっかり見守り、そして頃合いを見て、「○○ちゃん、お家でお食事が待っていますから帰りましょう」と、語りかける。この間の心配りが極めて自然で、子供の心を受け入れ、見守り、導くという、子育ての原点に触れたような気がしました。
どちらかといえば、親の意に、子供を従わせようと命令的に話すことの多い子供への対応が目立つ今日、こんなゆとりある親に育てられれば、子供の心は育っていくのだろうなと、自然のある環境は教育になくてはならないものだと考えさせられたひとときでした。