西 鋭夫

西鋭夫のアメリカ通信4 日本人拉致

西 鋭夫

スタンフォード大学フーヴァー研究所 小川忠洋フェロー

モラロジー研究所 特任教授

 

●日本独特の「平和的解決」は通用しない

 50年ほど前から、日本人の若い男女が北朝鮮に誘拐・拉致され、北朝鮮で死んだ。病死か、殺害されたのか。自民党政府はこの事実を知りながら、放置していた。「北とのお話し合い」で解決する誘拐事件ではない。
 日本国民が他国に拉致されたら、奪回に全力を挙げるのが国の義務である。責任である。国民の安全と命を守らねば、国を司る政府に存在価値はない。日本は、永い間知らぬ振りをしつつ北朝鮮に現金やコメや燃料をせっせと送り込んだ。日本の政治家たちは国民の生命と安全を犠牲にしてまでも北朝鮮に尽くさねばならない「借り」でもあるのか。現在、判明しているのは、8人死亡確認、5人生存、1人行方不明。何百人拉致されているのか。
 感情的になってはいけないと思う人もおられようが、夢や希望を持っていた若い日本人たちが北朝鮮のスパイにさらわれ、この世のものとも思えない恐ろしい土地へ運ばれ、そこで日本を恋しいと思いつつ、両親や家族のいる国へ帰りたいと涙しながらも、母国日本を攻撃するためスパイ訓練の道具として利用され、死んでいった。彼らは用が済んだので、殺されたのか。我々の純粋な「感情」は、このような国辱そのもの、非情な殺人行為に対して激怒するためにある。
 北朝鮮と「国交正常化交渉」をするな、と言っているのではない。するべきではあるが、北朝鮮は独裁者に牛耳られたテロ国家だ。国家単位の武装テロ集団である。日本国民は、この現実を忘れてはならない。日本独特の「平和的解決」は、通用しない。50年間も無効力だ。

 

●動きがとれない国となめられた国

 北朝鮮は攻撃用テポドンの改良に全力を挙げ、日本海や日本列島を越え、太平洋へ威嚇発射をしながら、日本に「援助しろ」と要求する。援助せよと急かす日本の政治家たちもいる。1994年と1998年に、北朝鮮の恐喝に脅された日本は、金とコメと医療品と軽油燃料をクリントン大統領の指令に従い、差し出した。
 不思議なことに、北朝鮮の核保有とミサイル発射事件に関して中国は何も言わない。中国は、日本市場で多額の利益を上げているにもかかわらず、何もしない。米国市場で莫大な利益を上げている中国は、米国民の「核武装をしている北朝鮮」の苦悩を「米国の自業自得だ」と楽しんでいる。米政府は北朝鮮の最大支援国である中国に北朝鮮の核武装を解いてほしいのだが、中国がその見返りに「台湾をくれるか」と弱みにつけ込んでくると懸念し、動きが取れない状態だ。金正恩委員長とトランプ大統領の会談に世界が注目しているのには、二人の決定に影響力があるからだ。
 北朝鮮は、日本と米国の支援なしでは北朝鮮経済の発展は不可能と自覚している。それ故、米政府に「1994年の約束を破り核兵器を製造したのか」と問いつめられた時、「そうだ」と白状した。日本人拉致を認め謝罪すれば、日米が共同して厖大な支援を与えてくれ、さらに黄金の日米市場経済に参加させて貰えると思ったからだ。日本をなめているのだろう。

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