エッセイ

久禮旦雄 -「勤労感謝の日」と「新嘗祭」・「大嘗祭」

久禮旦雄(くれ あさお)

京都産業大学准教授、モラロジー研究所研究センター伝統文化研究室客員研究員

皇室関係資料文庫に寄贈された大嘗祭関係の資料

 

 11月23日は「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日(祝日法)とされる「勤労感謝の日」である。

 

 戦前まで、この日は「新嘗祭[にいなめさい]」の行われる祭日であった。新嘗祭とは、天皇が新穀[しんこく]による神饌[しんせん](米・粟[あわ]のご飯のほか、鮮魚・乾魚、果実、白酒[しろき]・黒酒[くろき]など)を、天照大神をはじめとした神々に供え(「おもてなし」して)、神恩に感謝し、そのお下がりを天皇が召し上がることにより、生命力を回復・増進するという神人[しんじん]共食の祭祀[さいし]である。

 

 現在では、毎年、宮中三殿の西の神嘉殿[しんかでん]において、潔斎[けっさい]をされた天皇が、陪膳[ばいぜん]女官の奉仕を除いては、お一人で午後六時から同八時までの「夕[よい]の儀」、同十一時から翌日午前一時までの「暁[あかつき]の儀」を行われることになっている。実に合計四時間、正座で儀式を行われ、その間、皇太子も隣接する西隔殿[かくでん]で陪席[ばいせき]されている。

 

 なお、天皇が即位されると、新嘗祭を大規模な形にした「大嘗祭[だいじょうさい]」が行われる。このときには特別に、新穀を献上する二つの地方(悠紀[ゆき]国・主基[すき]国)が選ばれ、祭祀は大嘗祭のためだけに仮設される大嘗宮[だいじょうきゅう](東に悠紀殿、西に主基殿)で行われる。これらの諸祭儀は、皇室と日本文化、そして稲作との深いつながりを示すものであろう。

 

(『モラロジー研究所所報』平成29年11月号より)

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