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言論人連載コーナー

西鋭夫のアメリカ通信3 トランプ vs金正恩

西 鋭夫

スタンフォード大学フーヴァー研究所 小川忠洋フェロー

モラロジー研究所 特任教授

 

●米朝首脳会談はなされても……

 近年、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)委員長が弾道ミサイルを何発も日本海へ撃ち、日本アルプスを越えて福島近くの三陸沖に着弾させた。  
 日本全土、震え上がる。日本政府は強く抗議をするが、北朝鮮は聞いていない。日本を黙らせるかのごとく、もう一発撃つ。さらに、四発のミサイルを同時に発射させ、その映像を世界中に流す。日本は手足も出せない。出たのは、脂汗。
 日本の救いは、トランプ大統領。
 2018年6月12日(火)、シンガポールで米朝首脳会談が開かれた。初めて会ったトランプと金は、生き別れをした父親と息子のように振る舞う。日本脅しのミサイル発射が止まった。朝鮮戦争から68年、ヴェトナム戦争から43年も経って、現役同士の米朝首脳会談だ。
 第二回目の会談は、2019年2月26日(火)からヴェトナムのハノイで開かれ、現実に戻ったトランプと金は、妥協の接点が見いだせず、突然に決別。トランプが金に「北朝鮮の核兵器を全部米国に手渡せ」と要求したからだ。北朝鮮は、核兵器を失えば、潰される。米朝の危ない緊張が続く。北朝鮮の後ろには、中国とロシアが護衛として構えている。金はミサイルを撃ち、トランプと日本の注意を引く。

 

●日本への脅威は解消されるのか

 トランプ・金会談の熱(ほとぼ)りが冷めていない2019年3月6日に、ジミー・カーター元大統領が「私が北朝鮮へ行って交渉のお手伝いをしましょうか」と申し出る。
 カーターは、25年前の1994年6月17日(水)、クリントン大統領の特使として、また大統領経験者として初めて北朝鮮を訪問して、金日成(キムイルソン)(1912~1994年)と会談する。米国から「極東の危険人物」と見られていた金日成を制裁するために派遣されたカーターは「北朝鮮は平和な国で核兵器を開発しない」と断言し、後進国の北朝鮮を支援するために日本から現金・石油・食料を調達して手渡した。原子力発電所建設もその支援袋に入っていた。
 勝った金日成は、この20日後、死去。
 カーターはノーベル平和賞を授けられたが、北朝鮮は益々強くなり、核兵器を製造し、日本へ脅しをかけてきた。日本は、どちらを向いても、往復ビンタを食らった。いまや、弱腰のカーターが出る幕ではない。北朝鮮はカーターの骨までしゃぶる。
 2019年6月30日、朝鮮戦争の休戦のシンボル、38度線上にある板門店で、トランプと金正恩が出会い、握手をして、トランプが数歩歩いて、北朝鮮の領土へ入った。現役の米国大統領としては、初めて北朝鮮の国土を踏んだ。劇的な演出だ。二人の会談は、これからも妥協接点を求めて数回続き、どちらかがしびれを切らして大喧嘩になれば、日本への被害は甚大だ。中国とロシアは微笑むだろう。

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