家庭・家族

柴田美智子 – しっかり抱いて下に降ろして

 

「子育てはしっかり抱いて、下に降ろして歩かせる」とよく言われますが、私はその後に「やさしく応答、見守る育児」を付け加えています。

 

 また「乳児期は肌を離さず、幼児期は肌を離して手を離さず、児童期は手を離して目を離さず、思春期は目を離して心を離さず」という言葉もあり、これもまた成長する子供への適切な関わり方です。今、不登校、いじめ、ひきこもり、我がまま、落ち着かない等、子供のいろいろな問題が続出している状態ですが、それはこの「子育ての基本」が抜けていることが原因の基にあると思われます。愛情をかけているつもりが、過保護禍干渉、自立させているつもりが育児放棄。しつけのつもりが虐待。親達は誤解しています。また混乱しているようです。

 

 さて、それでは愛情、自立、自律、しつけ……どのように捉えたらよいでしょうか? どれも大切な子育て、人育て要因です。そこで私はこれらをまとめて「子育ての方法と手順・子育てA、B、C&D」と挙げてみました。Aは愛とよき刺激。Bは良き導き、勇気づけ。Cは自律、自立。そしてDは高い人間性・徳育、体育、知育、技能力です。

 

 子育ては「その内容と手順が大切」と私はいつも訴えています。子育ての初めはA・愛と心地よい刺激です。まず人はたくさんの愛情を受けて、安心して生きる基盤を獲得しなければなりません。愛されている、受け入れられている、認められているという自己愛の確立、自己肯定感なくして正常な自律も自立もできません。

 

 さらに、五感への心地よい刺激が無くては愛は十分とはいえません。五感への心地よい刺激はスキンシップの皮膚接触、母乳を吸う舌の触覚、嗅覚、聴覚、視覚、嗅覚。それらによって脳へのよき刺激となり、建設的な脳細胞の育成、人としての健全な土台をつくるのです。

 

 次にBの良き導き、勇気づけ。それはしつけあるいは教育ですが、肯定的行動を教えることがまず必要です。やりたいことをさせて、意志、意欲、行動の健全な発達を促すのです。人生は楽しいと知る、これがよく生きる基盤です。次はCの自律、自立です。ただやりたい放題ではなく、危ない事、してはいけないこと、我慢しなければならない事を教えるのです。ここで大切な事は叱るのではないのです。教えるのです。丁寧に教えるのです。

 

「しつけとは親がして欲しいことをしてもらえるように言い続ける事」と精神科医の佐々木正美氏がいわれていましたが、やたらに怒鳴ったり、脅したりして緊張を覚えさせると脳と心と行動にブレーキがかかり過ぎて意欲をなくします。「叱って育てると人間半分ダメにする」といいますが、前向きに建設的な性格をつくるのにはここがキーポイントになります。そしてDの高い人間性の育成はその後です。「愛なく育てると憎しみが育つ」と言われますが、早く立派にしようとし過ぎると「角を矯めて牛を殺す」如く、せっかくの徳育でその子を潰してしまいかねません。脳は生命の座の脳から動物脳から大脳、大脳新皮質へと発達します。体も心も同じです。

 

 このように子育ての方法と手順を簡単に述べてみましたが、まず子育て、人育ては愛からです。愛、信頼関係なくして次に進めないのはどんな関係でも同じです。

 

「しっかり抱いて、下に降ろして歩かせる」愛は伝えてこそ愛。伝わらない愛は愛にならないことも留意して欲しいものです。

 

柴田美智子:メンタルコーディネーター、メンタルトレーニング・インストラクター、モラロジー研究所生涯学習講師

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