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言論人連載コーナー

西鋭夫のアメリカ通信1 – 麗澤幼稚園の想い出

西 鋭夫

スタンフォード大学フーヴァー研究所 小川忠洋フェロー

元モラロジー研究所 特任教授

 昔々、私の娘が通っていた麗澤幼稚園で「父の日」があり、私も朝8時30分から参加した。幼稚園は深緑とバラ園に囲まれた総木造の優美な建物だ。50名ほどの父親が来ていた。母親たちも数多く見学している。幼稚園の先生が声高らかに「皆さん、ディズニー体操を始めましよう」と誘い、「ディズニー体操」の音楽が始まった。私と娘だけが踊れない。私と娘が聞いたこともない体操と音楽だ。

 ディズニーは、卓越した才能を持った集団で、米国文化製造業の代表的なお金持ちの会社。日本の天才的なアニメ作者を買収に来ているのもディズニーだ。その会社名の体操を日本の幼稚園で教えるのに驚いた。米国の幼稚園で父の日に、「ソニー体操」「トヨタ体操」を実行したら、政治問題にまで発展する。

 私の娘と息子を通して、日本の幼稚園と米国の幼稚園を比べ得る稀な経験があるので、記述したい。

 私がフーヴァー研究所の「小川忠洋フェロー」として在籍しているスタンフォード大学のキャンパス内に全米の「幼稚園ランキング」で毎年1位か2位と評判が高い保育所兼幼稚園の「ビング園」がある。樫とレッドウッドの巨木に囲まれた美しい幼稚園だ。スタンフォード大学児童心理学科の「実験室」である。

 ここに入るのは大学入試より大変で、私の妻は妊娠するやいなや、入園を申し込んだ。息子が生まれたが、3ヵ年待たされ、三者面談があり、やっと入園許可。子供が三歳になって願書を出すと、受付の大学院生のお嬢さんが笑みを浮かべ「3ヵ年待っていただきますので、見込みありません」と願書を受け取ってくれない。妊娠する前に、願書を提出するお母さんがいると聞いた。

 ビング園の願書には、日本では想像もつかない「不平等」「非民主主義的」な優先順序が最も目につくところに箇条書きで書いてある。

(1)スタンフォード大学教授および研究教授の子供

(2)入園希望児の姉または兄がビング園の卒園児

(3)スタンフォード大学職員の子供

(4)その他(入園、まず無理)

 年間(週5日、8時15分から11時45分までの7ヵ月間)の園費は8575ドル(約100万円)。大学関係者は、入園費も20万円安くして貰える。

 このような優先順序は、ハーヴァード、プリンストン、イェール、スタンフォードという名門私立大学では創立以来実行されている。同窓生の子息は優先的に入学できる配慮を受ける。

 スタンフォード大学の願書で最初の質問は「両親のどちらか又は兄姉がこの大学の卒業生か」。多額の寄付金を出す人の子息も優先的に配慮してもらえる。真の「私立」である。

 私の妻は幼稚園が好きなのか、「ベビー・ターザン」と呼ばれて麗澤幼稚園脱獄常習犯の息子が心配なのか、麗澤幼稚園とビング園に入り浸り。息子は三歳から麗澤の「年少さん」として4ヵ月お世話になった。

 私は園費の高いビング園にターザンを入れなくても良いと抵抗を試みたが、無視され、妻は「ビングは天才養育所」と大きな願望を抱えて朝早くから通園していた。

 米国と日本の幼稚園をじっくりと観察した妻は「麗澤幼稚園の方が素晴らしい」と断言した。なぜだと尋ねると、「麗澤の先生たちの勢いと熱心さと、園児に対しての忍耐力と寛容さ」と答えた。

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