道徳サロン

道徳科授業の効果的な在り方と評価

1 道徳科の在り方

 

(1)共に考え、共に語る

 今般の学習指導要領改訂でのキーワードは「主体的・対話的で深い学び」です。そして、道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現していくためのキャッチフレーズが「考え、議論する道徳」です。決まりきったことを言わせたり、心情理解のみに偏ったりする指導から脱却し、「考え、議論する道徳」の実現が求められています。

 

 道徳の教科化により「考え、議論する道徳」が脚光を浴びていますが、「考え、議論する道徳」は、これまでの道徳の時間で大切にしてきた「共に考え、共に語る」の指導観と関連しています。

 

 昭和33年に道徳の時間が特設されたときから学習指導要領の改訂が行われても、「共に考え、共に語る」という文言は連綿と指導書・解説編に示されてきました。二つの間で文言は異なりますが、その指導観は同一のものととらえることができます。これからも道徳科においては児童生徒と共に考え、共に語ることを大切にしていくべきだと考えます。

 

(2)考え、議論する道徳科の実現に向けて

 一般的な教科学習においては、知識を伝達し教えたり技能を習得させたりする方法で授業が展開していきます。しかし、道徳科の指導観・指導方法は異なります。もし、教科のような方法で道徳科の授業を進めていくと、教え込みの授業になってしまいます。教師は道徳科に関して指導意識の転換を図ることが大切です。もちろん、教師は明確な意図を持って授業を構成していきますが、そのねらいをつかみ取るのは児童生徒自身なのです。教師が、無理やりに価値観を説き押し付けたとしても、児童生徒が納得し自分の事としてとらえていかなければ、道徳性の育成にはつながりません。

 

 道徳性を育むための「考え、議論する道徳」実現のためには、児童生徒が考えてみたい、みんなで話し合ってみたい、と教材に関する工夫を行ったり、議論するための工夫を取り入れたりする必要があります。そして、なにより、教師の授業に対する心構えとして、一人の人間のよりよい生き方を追求していくという姿勢こそが最も大切だと考えます。

 

2 評価について

 

(1)道徳における評価の意義

 道徳に限らず、教育における評価には二つの意義が考えられます。一つは教師にとっては指導目標や計画、指導方法の改善に役立てるために行うものであり、二つめは児童生徒にとっては学習した内容がどれだけ定着し、どれだけ児童生徒の道徳性が成長しているかを確認して意欲向上につなげていくものです。

 

 このように、評価には二つの意義が考えられますが、道徳における評価に関しては、児童生徒が自分自身の道徳的成長を確認でき、自ら向上していこうとする意欲が持てるような評価を大切にしたいと考えます。

 

(2)道徳性に係る成長の様子の見取り

 学習指導要領には「児童(生徒)の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し、指導に生かすよう努める必要がある。」と述べられています。このことから、道徳科における評価は学習状況や道徳性に係る成長の様子を評価していくことが分かります。特に道徳性に係る成長の様子を評価していく場合は、視点を定めて見取っていかないと漫然とした評価になってしまいます。評価の視点を定めて見取っていくことが大切です。道徳性に係る成長の評価に関する視点を設定していく上で拠り所となるのは、やはり、道徳科の目標です。道徳科の目標との関わりで評価の視点をとらえていくと、次の視点が明らかになってきます。
○道徳的な価値の理解を基に、自己を見つめているか。
○道徳的な価値の理解を基に、多面的・多角的に考えているか。
○道徳的な価値の理解を基に、人間としての生き方について考えているか等。

 

(3)記述式で大くくりにまとめた個人内評価

 道徳科の評価は、学習指導要領に数値などによる評定は行わないものとすると明記されているので、文章表記による評価になります。そして、他者との比較ではなく個人内評価となります。つまり、他の児童生徒との比較や目標に対しての達成度を確認するのではなく、一人一人の子供の個人内での道徳的成長を文章で評価していくことになります。

 

 さらに、大くくりなまとまりを踏まえた評価としていきます。これは、一時間の道徳科で道徳性が育成されたか否かを結論付けることは困難だからです。したがって、道徳性の成長を一時間だけで見取り評価していくことは性急すぎるので、ある一定の期間の中で見取っていきます。それゆえに、大くくりなまとまりを踏まえた評価なのです。

 

(4)いろいろな評価方法

 道徳科の評価方法には道徳科のための特別な評価方法があるわけではありません。よって、これまで用いてきた以下のような評価方法を生かしながら評価していくことになります。方法は一長一短あるので、その特徴を生かしながら評価していくことが大切です。

 

①観察による方法
②面接による方法
③質問紙による方法
④道徳ノート、ワークシートによる方法
⑤ポートフォリオ評価による方法
⑥エピソード評価による方法
⑦パフォーマンス評価による方法

 

(5)評価の工夫と留意点

 

①児童生徒との信頼関係の構築

 児童生徒が真実の姿を表現しなければ、適正な評価はできません。やはり、児童生徒が教師に対して真実の姿を表せるような信頼関係を築くことが重要になってきます。普段から人間関係を密にして信頼関係を築いておくことが大切です。

 

②組織的、計画的な評価の推進

 評価は学級担任を中心にして進められていくと思われます。しかし、学級担任一人で評価を行っていくことになると、評価に揺らぎが生じ妥当性のある評価になりえないこともあります。そこで、評価の正当性や信頼性を担保にするために、学校として計画的、組織的に行っていくことが重要です。

 

③発達障害等のある児童生徒への配慮

 児童生徒の中には他者の気持ちを推し量ることが苦手であったり、自分の思いや考えを適切に文章で表すことに困難さを感じたりする発達に障害のある児童生徒もいます。道徳科の評価が個人内評価であることからも、このような児童生徒には個々の困難さの状況に応じた配慮をし、評価を行っていく必要があります。

 

麗澤大学大学院准教授 富岡 栄

<『モラロジー道徳教育』NO. 153 平成30年12月1日発行より>

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