失敗に学び、人生を拓く
人間は、誰でも「失敗」を経験するものです。失敗しない人などいません。
しかし、実際に失敗すれば落ち込み、なかなか立ち上がれなくなります。再び失敗することを恐れ、チャレンジ精神を失ってしまうこともあります。
さて、「失敗学」を提唱している畑村洋太郎・東京大学名誉教授の本には、こんなことが書いてあります。
「……失敗したときには誰だってショックを受けるし傷つきます。本人は気づかないかもしれませんが、直後はエネルギーが漏れてガス欠状態になっています。こういうときに失敗とちゃんと向き合い、きちんとした対応をしようとしても、よい結果は得られません。
大切なのは『人(自分)は弱い』ということを認めることです。
自分が、いまはまだ失敗に立ち向かえない状態にあることを潔く受け入れて、そのうえでエネルギーが自然に回復するのを待つしかないのです。」
(『回復力失敗からの復活』講談社現代新書より)
何か問題が生じたとき、私たちは必要以上に後悔や悲観をしたり、自暴自棄に陥ったりしがちです。また、原因や責任の追及のみにとらわれて、自分の正しさを主張したり、他の人を責めたりもします。これではいつまでたっても問題が解決しないばかりか、相手に対する不満を互いに募らせて、事態をますます悪化させることにもなりかねません。
問題を正しく解決し、同じ失敗を繰り返さないためにも、原因を究明することは必要です。しかし、何より大切なのは、その失敗を受けとめる自分自身の心のあり方です。生じた事態をどのように受けとめるかによって、失敗の経験もプラスへと転化させることができるのです。
苦難を「自分を次のステップへと導いてくれる、絶好の成長のチャンス」として前向きに受けとめるとき、それは苦しみではなくなります。そして苦難を克服したときには、喜びも生まれます。
他の人に対して広くやさしい思いやりの心を持って、加えて自己を省みるという謙虚さは、物事が順調に進んでいるときにこそ必要な姿勢でもあります。
そうした心づかいの積み重ねによって、自分自身の人間性や魅力が増大し、喜びに満ちた人生が拓かれていくのではないでしょうか。