物には「いのち」がある
宮大工の西岡常一氏(1908~1995)は、木には二つの「いのち」があると言っています。一つは、木のいのちとしての樹齢。もう一つは、木が用材として生かされてからの耐用年数のことだそうです。西岡さんは言います。
「木は大自然が生み育てた命ですな。木は物やありません。生きものです。人間もまた生きものですな。木も人も自然の分身ですがな。この物いわぬ木とよう話し合って、命ある建物に変えてやるのが大工の仕事ですわ」(『木のいのち木のこころ(天)』草思社)
この言葉からは、自然に対する謙虚さ、さらに「いのち」を活かしていく自分の仕事に対する責任感と誇りを感じることができます。
日常生活の中にある「物」は、すべて自然から与えられたものです。私たちには、自然の恵みに感謝して、物の「いのち」を大切に使う責任があるのです。
『ニューモラル』408号,『366日』12月24日
*『木のいのち木のこころ(天)』草思社参照。