ならぬことはならぬ
江戸時代の会津藩(現在の福島県)は、子弟の教育に力を入れたことで知られます。藩校に入学する前の子供たちは、同じ町内の子供同士で「什」と呼ばれる十人程度の集団をつくり、そこで「嘘を言ってはならない」「卑怯なふるまいをしてはならない」「弱い者をいじめてはならない」などの約束事を守るように努めました。この「什の掟」の最後は、「ならぬことはならぬものです」という言葉で締めくくられています。
ならぬことはならぬ――短いながら、現代の私たちにも強く響いてくる言葉です。
もちろん掟の内容は、武家社会の道徳を反映したものですから、現在にはそぐわないものもあります。しかし、子供たちが自分を律していくための善悪の基準を示すことは、現代のように社会生活の基本的なマナーやモラルを見失われている時代においては、あらためて見直すべきものがあるのではないでしょうか。
『ニューモラル』402号,『366日』10月27日