人を育てる覚悟と責任をもつ
親は、人生の先輩としての覚悟と責任をもつ心がなければ、次代の人間を育てる、「しつけ」の根本は、すでに波にさらわれていると言ってよいでしょう。
中国の明時代の衰了凡(えんりょうぼん)という人が書いた『衰了凡四訓』という本に、次のような話が出ています。
国中の人から、立派な人だと仰がれていた呂文懿公(りょぶんいこう)という人が、宰相をやめて郷里に帰りました。
そのとき、一人のよっぱらいが、呂公をののしったのです。
呂公は、門を閉めて相手にしませんでした。
ところが、このよっぱらいは、まもなく死刑になるほどの罪を犯したのです。
それを聞いた呂公は、あのときに、すぐ戒めておけば、そんな罪を犯させないで済んだのに、自分は、ただ寛大であるところを見せようと思って、人を育てる心がなかった、と後悔したというのです。
自分のことを考えていたのでは、人を育てることはできないという教えです。