苦手な人ほど「恩人」
高校教師のMさんが若いころのこと。クラスにS君という、いつも問題を起こす生徒がいました。Mさんはなんとかよい方向へ導きたいと思って心を配るのですが、反発を受け、悩みの種になっていました。あるとき先輩教師に相談すると、こんな答えが返ってきたといいます。「S君がいるからこそ“立派な青年に育ってほしい”という、君の生徒に対する愛情が引き出されている。さらに言えば、その愛情が届かないということは、まだまだ君の愛情が足りないことや教師として未熟な点があることを、S君が身をもって教えてくれていると考えられないか。S君は君の大恩人だよ。だから決して逃げてはいけない。真正面から向き合っていくんだぞ」と。
人に苦手意識を持ってしまったとき、“これも自分が成長するうえでの大切な出会いだ”と思い直すと、そこから新しい関係が開けてくるかもしれません。
『ニューモラル』459号,『366日』11月27日