心の成長にふさわしい出会い
江戸時代、『古事記』の研究で画期的な業績を残した本居宣長(もとおり・のりなが)は、生涯の師となる賀茂真淵(かもの・まぶち)に松坂(現在の三重県松阪市)で1度だけ出会います。
宣長は「私はかねがね『古事記』を研究したいと思っています。それについてご注意はありませんか」と尋ねました。
すると真淵は、「順序正しく進むということです。これは学問の研究には特に必要です。まず土台を作って、それから一歩一歩高く登り、最後の目的に達するようにしなさい」と答えました。
その後、師弟のつながりは文通によってなされますが、二人の面会は二度とありませんでした。
真淵の意思を継いだ宣長は、35年間努力を重ねて『古事記伝』を完成させます。
ただ一度の「出会い」が、宣長の人生を変えたのです。