心の均衡を取り戻す
ピンと張ったピアノの弦には、その緊張を解こうとする作用から、徐々にゆるみが生じていきます。また、周囲の温度や湿度の変化なども影響するため、どれほど万全を期しても、やがて音が変わってくるのです。
私たち人間の心もこれと似ています。熱心さや克己心は、私たちが目の前の困難を乗り越えて成長していくためには欠かせません。一方で、緊張と興奮にさらされ続けた心は、ふだんのゆとりや周囲との調和を失うことがあります。
心のゆとりを失ったとき、自分ではその異状になかなか気づかないものです。そればかりか、周囲に不協和音が生じると、他人こそが原因と考えがちです。すると、人間関係の不協和音はますます広がります。ピアノの調律と同じように、私たちも、日々乱れを生じていく心の均衡を、意識して取り戻す必要があります。
『ニューモラル』498号,『366日』12月6日