社会貢献

相続した財産を寄付するときに知っておきたいこと

財産を相続した人の中には、「社会のために活かしたい」と考える人もいるのではないでしょうか。一方で、故人の遺志で寄付をする「遺贈寄付」が広がりを見せており、関心が高まっています。また相続した財産から寄付を行う場合、相続税が免除される制度もあります。そこで今回は、相続した財産を寄付するときに役立つ情報を紹介します。

相続した財産を社会の役に立てたい


近年は生涯独身で過ごす人も少なくないため、被相続人に子供がいないなどの理由により思いがけず相続の対象となることも珍しくありません。中には、自分の思っている以上の遺産を相続するケースもあります。そうした場合に、突然手にした遺産を自分のためだけではなく、「社会の役に立てたい」と考える人も増えています。

遺産相続は、一見ありがたいことばかりのように感じるかもしれません。しかし、金額によっては納付する相続税が大きな負担となる人もいます。そこで、注目したいのが「寄付」という選択肢です。相続した財産を寄付することで、相続税を軽減できるケースがあるのです。相続した財産を特定の法人や団体に寄付すれば、非課税となるだけでなく、遺産という形で受け継いだ財産を困っている人や社会問題の解決に活用できます。

遺産相続で悩んだときのためにも、相続時における寄付の制度は押さえておきたい知識といえるでしょう。

遺産相続時の相続税と寄付による課税免除について


相続によって取得した財産を相続人が寄付した場合、基本的には相続税の対象となります。ただし、以下の条件を満たした場合は相続税が免除されます。

①相続後10ヵ月以内に寄付をすること
相続税の申告書の提出期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月です。それを超えると寄付金も課税対象となってしまうため、10ヵ月以内に寄付を済ませる必要があります。その後、寄付をした財産の明細書を添付して相続税申告書の提出をしましょう。

②寄付をする財産は相続によって取得した財産そのものであること
課税免除が認められるのは、相続や遺贈で取得した財産を寄付した場合です。相続財産としては、生命保険金や場合によっては退職金なども含まれます。相続財産以外の寄付は、非課税の対象にならないため、寄付控除を希望する場合は、お金の流れを明確にしておきましょう。

例えば、相続した不動産や有価証券を現金化した後に寄付をするケースでは、運用益が発生していると見なされて非課税の対象とはならないこともあります。一方、相続した不動産のまま寄付をする場合は、特例が適用されるため控除対象です。

③寄付先が国や地方公共団体、特定の公益法人(NPO法人)であること
相続税の寄付金控除が受けられるのは、寄付先が国から認定されている団体・組織である場合のみとなります。具体的には、以下の団体・組織が対象です。

・国および地方公共団体
国や地方公共団体には、寄付を受け入れるための専用の窓口が設けられています。また、近年は個人の寄付の方法として人気の高い「ふるさと納税」を活用することもできます。

・教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益法人
国公立学校、また私立学校でも国に認定されている場合は、控除対象の寄付先になります。また「日本赤十字社」「国境なき医師団」「ユニセフ」などが「特定公益増進法人」に認定されている相続税控除対象の寄付先です。モラロジー道徳教育財団もその一つです。

ほかにも、各所轄官庁が示す基準に適合している「認定NPO法人」も相続税寄付控除の対象となります。ただし、社会に貢献する活動をしていても、認定を受けていない場合は控除に該当しないため、注意が必要です。

④相続税の申告書に寄付した財産の明細と文科省が発行する相続税非課税法人証明書を添付する必要がある
先述したように、相続財産の寄付で相続税の控除を受けるには、申告の際に寄付をした財産の明細や、文科省が発行する相続税非課税法人証明書の添付が必要です。相続税非課税法人証明書は、発行までに1~2ヵ月程度かかるため、申請が期限ぎりぎりとならないように注意しましょう。

遺産を寄付する場合の2つの方法について

遺産の寄付には、次の2つの方法があります。

・相続人が寄付を行う
・遺言により寄付を行う

 

相続人が寄付を行う場合は、先述したような条件に沿っていれば相続税控除が適用となります。また、遺言により法人に寄付が行われた場合、寄付した財産は相続財産から除外されるため、相続税の対象とはなりません。また、認定された法人以外への寄付も可能です。

相続財産の寄付で叶える社会貢献と節税

思いもよらない多額の財産を相続することになった場合、「社会貢献の良い機会」と考える人もいるでしょう。相続財産を寄付すれば、相続時の大きな課題の一つ相続税の軽減策にもなります。ただし、寄付控除の要件はしっかりと押さえておきましょう。寄付先であったり時期を逸したりすると控除対象外となる可能性があります。

相続した財産を寄付したい場合は、適切な寄付先を選定することが大切です。また、申告の期限内にすべての手続きが完了するように留意することも忘れないでください。

当財団の寄付ページ

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