第3回 アンケート結果から見る「寄付とボランティア活動」が作り出す社会の未来について
寄付やボランティアについての考え方は人それぞれですが、近年社会が経験している多くの困難の中で、「人のために役立ちたい」という気持ちを感じている人が増えています。個人が行う寄付やボランティア活動には、どんな意味があるのでしょうか。
今回は、過去2回にわたり実施したアンケート結果から、寄付とボランティア活動の実態を探り、行動へのヒントを紹介していきます。
アンケート回答者情報
■アンケート実施時期
2022年2月中
■対象
インターネットで募集した回答者(条件縛りなし)
■性別
女性:59%(64人) 20~60代
男性:41%(45人) 20~60代
●過去2記事の振り返り
はじめに、過去2回にわたり実施したアンケートに基づく記事について、簡単に振り返ります。
第1回目のアンケートでは、寄付についての行動や意識を調査しました。その結果、約7割の人が過去に寄付をした経験があり、寄付行為への意識が広く根付いていることがわかりました。多くの人が前向きなイメージを持ち、社会への貢献感や自身の満足感を得ている傾向がみられます。
寄付の分野では、「緊急災害支援」「ふるさと納税」「国際協力」「子供関連」が上位となっており、社会の課題と密接につながり、助け合いの意識が軸となっている様子がうかがえます。「ふるさと納税」については、地方自治体を直接支援できるだけでなく、魅力的な返礼品とインターネット上から簡単に実施できる仕組みが上位にランクした理由といえるでしょう。
近年は、寄付の方法も多岐にわたり、日常の中でも機会はたくさんあります。しかし、信頼性のある寄付先を選ぶための情報提供の必要性が感じられる結果となりました。
第2回目では、ボランティア活動についての行動や意識の調査が実施されました。寄付と比較して、ボランティア活動への興味は5割程度にとどまり、ハードルの高さがうかがわれます。しかし実際には、「過去に何らかのボランティア活動に参加した」という人が約7割いました。参加したボランティア活動の内容は、町内やPTAなど身近な活動が多く挙げられています。
地域貢献に関しては、すでに生活に根付き浸透していることが理解できるのではないでしょうか。ボランティアに参加した人の多くは、寄付と同様に「何か社会の役に立ちたい」という思いがきっかけとなり、行動を起こすことで個人生活にも潤いや充実感がでてくると感じています。
社会問題への関心の高まりとともに、ボランティア活動へ参加しやすい土壌をどのように構築していくかが問われる結果となりました。
●寄付への関心で最も強いのは「子供への支援」
「寄付に関する意識調査」から関心の高い分野を見てみると、最も割合が高かったのは「緊急災害支援」でした。しかし、「子供関連(子供の飢餓と子育て・教育)」を合計すると28%となり、第2位の「ふるさと納税」(21%)を上回ります。子供への支援に対しては、なぜ関心が強いのでしょうか。
子供の飢餓については、現在さまざまな家庭事情によって、同じ子供でも育成の環境には大きな差が生まれているのが現状です。社会的な経済格差が拡大傾向の中で、「子供の貧困」も注目されるようになってきました。
「満足に食事をとれない」「教育を受けることができない」「社会的に孤立する」など、厳しい状況が理解されるにつれて、寄付で少しでも支援したいと考える人が増えていると推測されます。寄付することで可能となる子供への主な支援には以下のようなものがあります。
・子供食堂
・食料品・日用品の配布
・学習支援
・児童養護施設への支援
そもそも子供は、未来の社会をつくるかけがえのない存在です。そのため、子育て・教育の分野において、幅広いサポートが求められます。たとえば、他者への思いやりの心・感謝の心・自立の心を育むための活動、自然に対する畏敬の念を育てるための活動の場の提供・支援などがあげられます。一方で、子育て世代への情報共有、学びの場の提供・支援などもあげられることでしょう。
●「寄付」は「行動」を代替するものとして捉えられている
過去記事の振り返りでも見てきたように、「何か役立つ行動をしたい」と考える人は、思った以上に多い傾向にあります。しかし、自身の生活を鑑みると、社会貢献活動に多くの時間を費やすことは難しいことがうかがえるでしょう。
例えば、寄付で最も割合が高かった「緊急災害支援」で「なぜ寄付を実施したか」という問いについては、行動に充てる時間の代替として、「ボランティア活動ができない代わりに寄付を」と捉えている人が多い点が注目されます。
一方で、寄付をしている人は、ボランティアをしている割合も23%と高い傾向にあります。社会に対する関心が、両方の行為へとつながっていることがわかります。ボランティア活動に参加したことがある人は、以下のような身近に協力できる項目が多くみられました。
・まちづくりのための活動
・PTA活動
・学校行事
・自然や環境保護活動
・献血などの健康や医療に関連した活動
・子供の学習支援や居場所づくりなど
現地に赴き、労働力を提供することは難しくても、違った形でのボランティア活動にたずさわる人はたくさんいます。自身がボランティアとして活動するのが困難な場合でも、寄付でさまざまな活動の一端を支えようという意志が感じられます。寄付とボランティア活動は表裏一体といえるのではないでしょうか。
いずれの行動も、身近なことから問題意識を感じ取り、自発的なアクションとして提供することに他なりません。寄付に関する「日ごろから必要性を感じていたから」と、ボランティアに関する「放っておけない問題や課題があったから」は、形こそ違っても似たような意識と考えられます。「何かしたい」「何かしなければ」という気持ちが、寄付とボランティア活動の根幹にあるといえるでしょう。
●「寄付」は「行動」を代替するものとして捉えられている
寄付やボランティア活動の根底にあるものが、身近なことに対する問題意識に起因することは、前段で明らかになりました。実際に参加したことがあるボランティア活動としては、上記で示すとおりです。まちづくりやPTA活動などは、未来を担う子供への支援に直結したり、関連したりする部分のため、ここでも子供への支援がボランティア活動に深く関わっているといえます。
自然や環境を守る活動も、「将来に向けて健全な生活ができる環境でありたい」「現在あるものをこれからも残していきたい」といった思いが軸となっているといえるでしょう。その他で目立つのは、被災者や高齢者、障害者など社会的弱者に向けた活動です。支援者側から手を差し伸べ、助け合う社会をつくるという共生の意識が感じられます。
その他にも、ボランティア活動の項目はさまざまです。自身の日々の問題意識と重ね合わせ問題解決のためのアクションとして、行動が可能な人は「ボランティア活動」、難しい人は「寄付」という形で貢献できれば、より良い社会づくりに活かされるでしょう。
●モラロジー道徳教育財団で実施している寄付活動やボランティア活動の事例
モラロジー道徳教育財団では、寄付による活動、ボランティア活動を幅広く実施しています。主な活動について、ご紹介しましょう。
▶ 寄付活動
・青少年育成:自然体験宿泊型セミナー、エッセイ募集、地域の清掃活動を通じて青少年の育成に貢献
・子育て支援:親カフェサロン、講演会を通じて、子育て世代の悩みや相談ごとに対応
・学校教育への支援:児童・生徒対象の道徳の出前授業、教員対象の道徳授業の研究会を開催
・災害支援活動:被災地救援活動、復興ボランティア活動の原資とする
・シニア世代の活躍支援:講演会、健康運動教室を通じて生き生きとしたシニア生活を応援
・社会人対象生涯学習セミナー:オンライン・対面による生涯学習セミナーを実施し、社会人の学びを支援
▶ ボランティア活動
・クリーンプロジェクト:全国各地で清掃活動を展開
主な内容としては、海岸や河川敷、公園、神社といった多くの人が利用し、憩いの場となるエリアを中心に清掃活動を実施しています。
・ユニセフ・ハンドイン・ハンド募金
毎年50会場以上で実施し、世界の子供たちのための寄付を呼びかけています。1979年の第1回より参加を継続しており、モラロジーを学ぶ青年たちを中心に若い世代が活動しています。
・災害支援活動
毎年のように発生する自然災害の被災地域に対して、物資を送ったり現地へ赴き災害支援活動に従事したりする取り組みを行っています。
財団の活動を通じて、ボランティア活動に参加する機会は多くあります。活動に参加したい、そう考えたなら、ぜひはじめの一歩を踏み出してみましょう。
●ボランティア活動に参加したきっかけについて
これまで見てきたように、多くの人が寄付やボランティアに対する必要性を感じていることがわかりました。寄付はインターネットからでも気軽にできるようになりましたが、ボランティア活動となると、なかなか行動に移すのは難しい人も多いでしょう。ボランティア活動のきっかけについて、アンケートの結果では、以下のようになっています。
●④ボランティア活動を実施したきっかけは何か?(複数回答)
最も多かったのは、日ごろから感じている「社会の役に立ちたい」という社会への貢献欲求です。社会に貢献したいという気持ちは、自身の生きる存在価値や所属意識にも関連します。しかし、それらは問題意識を持っているからこそ感じることです。社会課題に対して勇気を持ってアクションを起こし、具現化した形となったのがボランティア活動への参加といえます。
また、「身近に放っておけない問題や課題があったから」も同様に「他人事ではない」という意識から生まれたものと考えられるでしょう。社会の一員として、「自分にできることがあればやろう」という気持ちが、行動の起点となっているのです。たとえ、自分の生活時間を犠牲にしても、周囲のために働きたい意志が感じられます。
一方で、「周りの人がやっているから」という回答も多くあります。実は、自身のすぐ近くに解決できる問題がたくさんあることもわかります。ボランティア活動は、自由意志による行動のため、たとえ隣の人が行っていても興味がなければ参加しないでしょう。自分の中にもボランティアへの意識があり、すぐ近くにいる人の行動が気付きとなるケースもあります。
第4位の「特に理由はない」という回答も意外なように感じるかもしれません。しかし、ごく当たり前にボランティア活動へ参加しているといった見方もできます。ボランティアと聞くと、ハードルが高そうなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、始めるきっかけはどのような気持ちでもかまわず、ごく身近なところで良いのです。
上記の表の中にも、「有意義に過ごしたい」「スキルを活かしたい」「仲間が欲しい」といったごく個人的な思いがきっかけとなった例も見られます。自分の関心のある分野であれば、ちょっとした興味からのぞいてみたら自分に合っていて続けられることもあります。
また、実はすぐ近くにも、社会のために何らかの活動をひそかに行っている人がいるかもしれません。きっかけはどうであれ、意識を行動として表現することが自分にとっても何かを得る機会となるのではないでしょうか。
●一人の小さな気持ちが社会の未来を変えていく
2回にわたる寄付とボランティア活動への調査から、一般的な人が抱く本音や意識がより深く見えてきました。日本人は、「ボランティア精神が低い」といわれています。しかし、多くの人が「社会の役に立ちたい」という思いを持ち、ボランティア参加ができない場合は寄付をして社会に貢献しようと考えている人がいることがうかがわれます。
一人の出せる寄付は少額でも、たくさん集まれば大きな支えとなっていくことでしょう。小さなきっかけから始まった活動がやがて大きな活動に広がっていく可能性があるのです。たとえ小さなことでも今できることから始めてみてはいかがでしょうか。