社会貢献

寄付に関する意識調査 第1回 寄付の動機と目的について

寄付は自発的な社会貢献の一つです。しかし、どのような思いで、また具体的にはどのような形で実施されているのでしょうか。今回は、寄付に関する意識についてのアンケート調査から見えてきた、寄付の動機や目的、寄付をすることについてのイメージ、今後の寄付行動への考え方をまとめてご紹介します。

アンケート回答者情報

■アンケート実施日
2022年2月中
■対象
インターネットで募集した回答者(条件縛りなし)
■性別
男性:41%(45人)20〜60代
女性:59%(64人)20〜60代
■調査会社
CONOC株式会社

●①寄付をしたことがあるか?

 寄付の経験割合
ある7972%
ない3028%

まず初めに、寄付をしたことがある人が、全体の中でどの程度の割合なのかを見ていきましょう。調査結果で「寄付をしたことがある」と回答している人は、全体の72%でした。社会の中で、約7割を超える人が他者のために寄付をしています。

本調査において回答者の年収は無作為とされていますが、収入の規模に関係なく寄付活動を行うとみることができます。多くの人の中に、寄付への意識が根付いているといえるでしょう。

 

●②「寄付」に対するイメージ(複数回答可)

 寄付のイメージ割合
良いこと5937%
社会参加4428%
自己満足3019%
税金対策74%
うさんくさい74%
偽善的53%
その他32%
必要不可欠21%
金持ちの道楽21%
恥ずかしい11%

寄付に抱いているイメージの結果は、上記のようになりました。「よいこと」「社会参加」と考えている人が多いようです。また、寄付をすることで満足感が得られるようです。今回のアンケートから、約7割の人が寄付に対してポジティブなイメージがあることがわかります。

もともと日本は、チャリティーに熱心な国ランキングでも100位以下(2021年104位、CAF調べ)という状況で、海外に比べてチャリティーや寄付への意識が低いと言われています。7割の人が寄付を実施しているのに対し、なぜそのようなことが言われるのでしょうか。「自己満足」「うさんくさい」「偽善的」と答えた人が約3割にものぼることから、はじめから否定的に見ている人が一定数いることは確かなようです。そこには、「自分が一時的にわずかな寄付をしても、あまり社会に役立つものではない」という懸念も内在しているのかもしれません。

 

●③どのような分野へ寄付したことがあるか

 どの分野に寄付をしたか割合
緊急災害支援4831%
ふるさと納税2214%
国際協力2013%
子供の飢餓1510%
子育て・教育138%
福祉117%
クラウドファンディング85%
環境問題75%
まちづくり21%
スポーツ支援21%
その他53%

寄付先の分野で最も多かったのが、「緊急災害支援」です。特に、近年は阪神淡路大震災や東日本大震災をはじめ、大規模地震や豪雨被害、火山の噴火などの発生に伴い、国内外にわたって寄付をする機会が多くなっていることが背景にあります。

次いで多かったのが「ふるさと納税」です。「納税」という名称のため、寄付意識があまり高くない人もいるかもしれませんが、ふるさと納税の税制上の扱いは寄付となります。ふるさと納税は、選んだ自治体への寄付になりますが、返礼品への興味や税額控除を目的に行う場合が圧倒的に多いため、一般的な寄付とはモチベーションが異なる可能性が高いでしょう。

ただ、ふるさと納税の主旨が次第に理解されるに従い、純粋にその自治体を応援したい気持ちで実施する人もいると見られます。上記で紹介した緊急災害支援とも関連しますが、直接的に被害を受けた人たちの支援につながる手法としても注目されています。

子供に関連する寄付も、常に多く見られる分野です。合計すると、18%を占めています。関心が高い理由は、子供たちが未来を担う存在であると同時に、子供が幸せに暮らせる社会であって欲しいという願いがが根底にあると思われます。

また、寄付意識が高い分野かつユニセフやセーブ・ザ・チルドレンなどの活動の認知度が高いことも影響していると考えられます。一方、クラウドファンディングへの支援は低く5%です。近年は、新規事業の立ち上げだけでなく、新型コロナウイルスの蔓延や災害などで危機的状況にある企業の応援手段としても注目され始めましたが、まだそれほど一般化していないことがわかります。

ただ、2017年以降、クラウドファンディング市場は順調な伸びを見せており、特に寄付型では2020年以降、新型コロナウイルス関連のプロジェクトが増加する傾向となっています。寄付の形態としては、比較的新しい分野のため、今後の成長が期待されます。

 

●④なぜ③の分野に対して寄付を実施したか?

 寄付の理由割合
ボランティア活動の代わり2923%
日ごろから必要性を感じていたから2822%
寄付先の団体の活動に共感したから2620%
返礼品に魅力を感じたから1915%
なんとなく1713%
他人に勧められたから22%
その他63%

寄付をした分野への実施理由として多かったのは、「ボランティア活動の代わり」「日ごろから必要性を感じていたから」などです。ここから、普段から感じていた問題意識への行動手段として、寄付を選択する人が多いことがわかります。

しかし また、「寄付先の団体の活動に共感したから」が、20%と多く見られました。この回答からも、寄付をする人は寄付後の活動実績などをよく見ているといえるでしょう。自分の善意がどのように活用されているのかは、寄付する側の大きな関心の一つです。

「返礼品への魅力」15%は、ふるさと納税を行う理由の一つです。きっかけはどうであれ、寄付によって助かる自治体があるのであれば、立派な支援行為といえます。

また、13%の人は、「なんとなく」という回答でした。人によって寄付を行う動機はさまざまですが、先述のとおり「日ごろから必要性を感じている人が多いことの表れ」と考えられるでしょう。ふとした機会に寄付を行うことで、いつも感じていた社会貢献への思いを体現していると推量されます。

 

●⑤寄付先の選定

 寄付先の選定割合
活動内容への共感5140%
お金の使い道の透明性1512%
問題の緊急性3124%
団体の知名度1512%
寄付金額に応じて108%

寄付先の選定には、さまざまな選定軸が人それぞれにあり、各理由もうなずけるものでした。最も多かったのは「活動内容への共感」です。④の項で解説したように、寄付先の活動実績や活用用途などが重要と考えられます。

「お金の使い道の透明性」は、自身の寄付が確実に要支援者に届けられるかどうかが重視されていると考えられます。困っていたり、支援が必要であったりする人に自分の寄付が役立つことこそ、寄付行動の最大の目的です。透明性を確保する意味でも、やはり寄付先団体の活動実績や寄付の活用効果などの開示が重要と考えられます。

近年は、善意に付け込んだ募金詐欺・チャリティー詐欺などが多発しており、街頭募金のような匿名性の高い寄付行為の場合には補償が困難です。こうした事情からも、寄付する側が寄付先の選定に対して慎重になることは、当然といえるでしょう。

「お金の使い道の緊急性」は、主に災害支援の経験者の回答と思われます。寄付として集められたお金が、緊急的に必要としている人のために速やかに役立つことを重視している様子がうかがえるでしょう。

 

●⑥寄付のきっかけ

 寄付のきっかけ割合
HPを見た4951%
家族・知人に頼まれた1415%
DMを見た77%
書籍を見た44%
その他2223%

一般的に、寄付の大きなきっかけとなっているのが、寄付先のサイトです。今回の調査でも「HPを見た」が、きっかけの最大の理由として挙げられています。何かの理由で寄付をしようと思い立ったとき、要支援者についての最もタイムリーな情報を得られるのがインターネットということは、現在の社会状況からも当然といえるでしょう。

さらに、寄付先の活動実績を詳しく確認でき、情報を容易に得ることができる点でもHPが果たす役割は大きいと考えられます。既存の媒体である「書籍」や「DM」は、トータルでも全体の10%程度です。こうした媒体では、寄付をしようとした時点で、すでに情報が古くなっていることもありえます。

寄付先となる団体や組織のHPの充実度が、寄付者に対するアプローチの度合いを大きく左右することは間違いありません。

 

●⑦寄付で得られるもの

 寄付で得られるもの割合
満足感4548%
特にない2223%
寄付先が改善したという実感1112%
さらなる使命感77%
節税66%
その他33%

「寄付した結果、あなたが得られたものは?」という問いに対しては、「寄付者自身のメンタル的な獲得物が多い」という結果となっています。寄付による充足感や社会への貢献感といった精神的な安定を強く求める傾向が見て取れます。

一方で、「寄付先が改善したという実感」は、12%程度でした。これは、「寄付先で受託した寄付金でどのような活動を展開したのか」「それにより社会的な課題がどう改善したのか」が一般に伝わっていないことや、変化に時間がかかり、すぐ効果が出る課題ばかりではないことなどが理由と考えられます。

そのため、寄付先団体は、寄付金による活動実績の報告をより強化し、寄付者と社会課題の改善との関連性をより分かりやすく伝える工夫が必要です。実際には、社会課題の解決に寄付活動が大きな貢献を果たした事例が数多くあるからです。課題によっては長い目で支援が必要だったり、実績を見続ける必要があります。 特に近年、日本国内でも取り上げられることの多い教育格差や年少者の虐待といった行政の手の行き届かない問題では、寄付による活動が子供たちの救いとなっています。また、コロナ禍の中、これまで普通に暮らしてきた人たちが一気に困窮する事態も多数発生しました。

今日食べる物にさえ困る状態となっても、どのように援助を求めてよいかわからないケースも少なくないようです。そうした人々の受け皿となり、炊き出しや食料の配布を行ったのも、寄付を財源として活動するさまざまな団体でした。

法律や制度のような大枠ではとらえきれず、こぼれ落ちる悲劇を救うのは、市民による活動が大きな役割を果たします。その活動の多くを支えているのが、寄付金であることも忘れてはなりません。

 

●⑧人生でこれまでに寄付した金額の合計は?

 寄付の金額割合
1円〜1,000円1417%
1,001円〜5,000円1721%
5,001円〜10,000円1620%
10,001円〜30,000円1215%
30,001円〜100,000円1316%
100,001円〜1,000,000円911%

一般的には、一人あたりでどの程度の金額を寄付しているのでしょうか。もちろん、寄付に出せる金額は人の年齢や生活事情によって異なります。本調査でも、回答者の経済条件により寄付金額が異なっていることが予想されますが、注目すべきはこれまで1万円以上の寄付を行ってきた寄付をする人が全体の42%もいることです。

他者のために決して少なくない金額を提供しているため、日本でも想像以上に寄付文化が進んでいると見ることもできます。コロナ禍を機に寄付額1兆円を越えたことでも、寄付が広く浸透してきたことがわかります。また現在、ウクライナへ向けて多くの支援の声が聞かれるのも、困っている人を助けたい、何かの役に立ちたいという心の表れでしょう。

本調査では10万円以上の寄付も寄付をする人全体の11%に上っています。ただし、累計での回答となるため、年齢による金額の多寡も考慮に入れる必要があります。次回の記事では、金額と年齢・職業・性別などの切り口で、アンケート結果を分析する予定です。

寄付については、正解や適当な金額はありません。その時々に無理のない範囲で寄付を行うことが最も重要です。寄付が生活の中で習慣化されていくうちに、人生においての寄付金額が積み上がります。もちろん、相続した財産を寄付するケースも想定されますが、高額な寄付の金額を回答した多くの人は、「回数を重ね、結果的に相当な額に達した」と考えられます。

 

●⑨寄付をしたことが「ない」人が今後、寄付をする機会があればどのような分野に寄付をするか?

 今後の寄付の分野割合
緊急災害支援2429%
ふるさと納税1821%
まちづくり810%
子育て・教育810%
福祉78%
こどもの飢餓67%
国際協力56%
環境問題45%
特にない45%

これまで寄付をしたことがない人が、今後寄付をする機会を想定した場合、上位だったのは実際に寄付したことがある人と同様に、「緊急災害支援」「ふるさと納税」という回答でした。

自分の住む環境とは異なる場所で起こっている問題については、自分事としてイメージしにくいため、寄付へのハードルが上がるのかもしれません。環境問題や世界の貧困については、動画や写真などによって現状を訴えかける広告が多く見られます。

 

●⑩今後、寄付をする機会があれば、どのような指標で寄付先団体を選ぶか?

 寄付の指標割合
信頼性・堅実性8441%
公益性・公共性4321%
緊急性3818%
事業規模・知名度199%
実績199%
その他42%

寄付先を選ぶ際には、どのような点が基準とされるのでしょうか。本調査の結果によると、信頼性の高さが最低条件となっていることがうかがえます。これは、寄付に対してネガティブなイメージを持つ理由の裏返しです。透明性や信頼性が高まっていけば、寄付に対してより積極的になれる可能性を示しています。

公益性や公共性の高い団体が選ばれることの多い理由は、寄付がそもそも「公共のための利益」という側面が強いからです。「誰か一人のため」というよりは、「社会全体を良くするため」というのが寄付行為の前提となっています。一方、アンケートでは、「実績はあまり関係ない」という結果でした。ただし、ここで意味する「実績」とは、団体や組織の年数・経験といったことが考えられます。

「活動実績」は、寄付先としての団体が信頼性や堅実性を得るための条件として欠かせない要素です。活動実績のない寄付先に大切なお金を預けようと考える人は、まずいないでしょう。「HPがきっかけ」という説明でも述べたように、該当する団体が寄付をどのように使っているのかについて、確認したいはずです。

他方、団体自体の知名度や事業規模は、寄付先の選定にあまり影響しないことも示されています。信頼性と知名度は、必ずしも寄付をする人の中でリンクしていません。「自分が寄付で何をしたいのか」「誰のために役立ちたいのか」という目的に、その団体の活動がどの程度合っているかが重要と考えられます。

知名度に関わらず、寄付先として価値があるかどうかは、寄付する人たちの思いが適うかどうかなどの寄付行為の元となる理由が基準となります。寄付先となる団体では、活動実態をできるだけ詳しく、具体的かつ明確に示していく必要があるでしょう。

 

まとめ

寄付についてのアンケート調査を通じて、寄付をする側の思いがけない事情も見えてきました。個人にとっての寄付行為は、人それぞれに意味があり、時にはネガティブな意見も見受けられました。ただ、確かなことは、多くの人が「社会の役に立つために寄付を行いたい」という善意や意志を持っていることです。

そのような多くの人々の善意や意志を実際の行動へと促していくためには、正確でわかりやすい情報の提供や寄付のしやすい仕組みづくりが何よりも大切といえるでしょう。

 

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