寄付講座について知ろう

経済成長、産業の振興のためには新たな分野の学問の研究、それに精通した人材の育成が不可欠です。また、以前からある分野においても、必要とされながらこれまでスポットが当てられず、研究が進んでいないケースもあります。寄付講座は、こうした課題に対して、産学連携しながら取り組む活動です。
講座に必要となる資金や人材を寄付で賄い、奨学に役立てます。ここでは寄付講座開催の基本的な知識や目的、寄付講座の事例を紹介していきます。
寄付講座とは寄付によって成り立つ講座

「寄付講座」は、寄付によって成り立っている講座ですが、その意義とは何でしょうか。寄付講座の基本的な知識を解説します。
- 寄付講座とは
- 社会連携講座との違い
- 寄付講座の現状
- 静岡産業大学:「地域における産官学連携」
- 東京大学:「先端人工知能学教育寄付講座」
- 青山学院大学:「ヘルスプロモーションへの取組み」
- 東京家政大学:「社会と生活環境」
- みずほファイナンシャルグループ:「金融分野での教育を行う寄附講座を設置」
- 麗澤大学
- 麗澤中学・高等学校
- 各種講座開設
- 学生対象セミナー
- クリーンプロジェクト
- 家族のきずなプロジェクト
- 企業永続のための階層別ビジネス講座・セミナー
寄付講座とは、主に産学連携の一環として行われる取り組みです。民間の企業や行政組織などと研究機関や大学が連携し、外部の企業や組織から寄付された資金や人材を活用して研究教育を行う活動を指します。
企業と連携して開催されるものには、他にも社会連携講座や共同研究講座があります。社会連携講座や共同研究講座の場合、出資元は企業で研究開発の成果が企業側に還元されるのが特徴です。一方、寄付講座は、個人や一般団体からの寄付も対象となり、連携する企業側への還元は約束されません。
このように、寄付講座では非営利目的の講座が多く、寄付者の意図に応じて資金や人材を活用するケースが多数を占めます。
国内では、2004年4月に国立大学が法人化されてから、多くの大学で寄付講座を開催。また、採用市場が増す近年、企業側でも将来の人材獲得を目的として寄付講座を設置する例が増加傾向にあります。産学連携の施策実施においては、2010年代から「寄付講座・寄付研究部門」の着実な増加が見られます。
何故寄付講座が存在するか、寄付講座の目的とは

寄付講座は、何のために存在するのでしょうか。寄付講座開設の目的の一つは、研究されるべき価値のある学問でありながらも、資金や人材の問題で研究が進まない分野に対してスポットを当てることです。個人や企業の資金力を持つ側が、提供できる範囲で社会を改善するための教育・研究に参画する場となります。
企業が資金提供する場合には、講座開設だけではなく、学校機関や学校法人に対して人材やカリキュラムを提供するといったケースが多数あります。特に、企業活動に直結するような内容を扱う場合には、経験豊かな実務担当者が講師を務めることも多く見られます。日本の大学は他国と比べて、即戦力となる人材を育て切れていないという点が指摘されます。
社会や企業が必要とする即戦力の人材を育成するために、また社会に役立つ分野の研究を促進するために、産学やその他の組織が連携しながら実践的な教育・研究を行うのが、寄付講座です。
寄付講座の事例

実際に、運営されている寄付講座の事例を紹介します。
地域の協力を得て、多数の寄付講座を開設。地域社会に貢献する人材育成のため、「講師はすべて企業の人材」「資金負担もすべて企業側」というスタイルで実施を継続している。
寄付企業は、ドワンゴ、トヨタ自動車、オムロン、三菱重工、パナソニック、野村総研、ディー・エヌ・エー、みずほフィナンシャルグループなど多数。「AIの教育と研究」「正しい認識の拡大」「AI研究の底上げ」を目的とし、企業8社からの総額9億円の寄付をもとに5年間活動を行った。
大塚製薬との連携を行い、「企業活動」、「水分補給」、「女性の健康」、「栄養と体調管理」など、製薬会社としての視点による、人々の健康から社会に関わる幅広いテーマについて、オンライン講義を実施。
エフシージー総合研究所と連携し、「暮らしと環境」「サービスと環境」「エコ時代の生活家電」といった暮らしと環境に関わるテーマで、同所の研究員が講師を務める通年の講座を実施。生活を取り巻くあらゆる分野を網羅し、新入生を対象に社会との関係性を紐解く講義を提供した。
京都大学、一橋大学、慶應義塾大学などにおいて銀行・信託・証券・アセットマネジメント・シンクタンクなど、グループ会社の経験豊かな実務担当者が講師となり、総合金融グループならではの最新の金融実務知識を活かした講義を実施している。
モラロジー道徳教育財団の寄付講座
モラロジー道徳教育財団の寄付講座の事例を紹介します。
麗澤大学では、2016年度より「道徳経営特論A」を開講。以来、履修者が100名を超える人気となり、現在は正式科目として展開されています。大学の創立者である廣池千九郎博士は、道徳と経済は一体であるという考えを広く経済界に唱えてきました。同授業ではその教えの下、実際の企業経営に照らし合わせ、経済と道徳の関係について学びを深めています。
2021年6月には、(株)八天堂 代表取締役社長 森光孝雅氏が講師となり、自身の体験に基づき、道徳的な経営の重要性を学生に説きました。企業経営の第一線にある同氏の生の声は、社会の未来を担う学生たちに大きな感化を与えました。
麗澤中学・高等学校においては、道徳の授業やキャリア教育の一環としてモラロジー道徳教育財団の関わる授業が行われています。
2019年に実施された「未来を招くキャリア・スタディ」では、中学2年生の生徒を対象に複数の企業や団体から企業活動につながる課題が出されました。生徒たちはグループごとに課題について話し合い、その結果をプレゼンテーションで発表。各企業と生徒たち自身の評価によって、優秀プレゼンテーションの選出を行いました。
このキャリア教育を通し、自分たちと企業・社会のつながりを改めて意識すると同時に、課題に対してアイデアを出し合い、協働する学びの場が得られました。生徒からは現在の生活が将来と結びついていることを実感し、社会の仕組みに興味がもてるようになったという声が上がっています。
モラロジー道徳教育財団の寄付用途実績
モラロジー道徳教育財団は、1926年(大正15年)に倫理道徳の研究と総合人間学モラロジー(道徳科学)に基づく社会教育活動の推進を目指し設立されました。人間がよりよく生きるための道徳実行の指針を提示し、個々の人間性・道徳性を高めることを目指して全国でセミナーや講座、講演会を開催しています。
モラロジー道徳教育財団の寄付金の使用実績を紹介します。
・青少年育成(自然体験宿泊型セミナー、エッセイ募集、地域の清掃活動)
・子育て支援(親カフェサロン、講演会)
・学校教育への支援(児童・生徒・学生対象の道徳の出前授業、教員対象の道徳授業の研究会)
・災害支援活動(被災地救援活動、復興ボランティア活動)
・シニア世代の活躍支援(講演会、健康運動教室)
・社会人対象生涯学習セミナー(オンライン・対面)
・企業の人材育成(新入社員教育、経営者・幹部対象セミナー)
いくつか詳しくみていきましょう。
日常生活における心づかいの大切さを学ぶ生涯学習セミナー、モラロジーに基づく道徳実行の効果などについて学ぶ講座などがあります。
同世代との共同生活を通じ、「感謝の心」「思いやりの心」「自立の心」を養うセミナーを開催。小・中学生を対象とした最長5泊6日間の野外体験プログラム、高校生を対象とした2泊3日のセミナー、大学生を対象とした3泊4日のセミナーなどが実施されています。
自分たちが暮らす地域・社会に対して感謝の気持ちを込めて、全国各地で清掃活動を展開。海岸や河川敷、公園などの清掃活動を通じて、社会貢献の心と共生への精神を学びます。
心の教育の出発点となる家庭の力を強化、サポートするために「家庭の教育力回復」「地域の道徳力向上」「学校における道徳教育の支援」を目指し、講演会の開催、メッセージやエッセイの募集など全国各地で活動を展開しています。
新入社員向け、中堅・幹部社員向け、経営者・経営幹部それぞれの層を対象とした講座・セミナーを開設。経営者からリーダー社員、新入社員に至るまでの各世代に対して、ビジネスパーソンとしてのスキルとマインドの向上、さらには企業の成長や発展に貢献するセミナーを展開しています。
モラロジー道徳教育財団では、道徳の研究を基盤としながら社会貢献活動を展開。集められた寄付金は、財団の日々の活動および災害被災者への支援や、企業の人材育成支援など、現在から未来に向けたよりよい社会づくりに役立てています。
モラロジー道徳教育財団への寄付は日本の未来を育てる一役を担い、社会貢献活動への参画につながるでしょう。
未来に向けて人材と産業を育てる寄付講座
寄付講座は、企業活動と学ぶ人を結ぶ、大きな役割を持っています。現代社会が求める人材を育成し、優れた研究にスポットを当てる場としても期待されるものです。企業や各学校も、寄付講座の必要性とその効果に注目しています。日本の未来の成長力を育てるためにも、さらなる寄付講座の拡大が求められます。