活用したい「寄付金控除」とは?

「災害時に」「困っている人に」など、日本でも寄付を行う人が増えつつあります。ただ、寄付を行ったときに利用できる寄付金控除を知っている人は少ないかもしれません。寄付金控除は、納税者であればだれもが知っておきたい制度です。ここでは、寄付金控除の概要や制度の詳細、利用の仕方について詳しく解説していきます。
寄付金控除ってどんな制度?

寄付金控除とは、どのような制度なのでしょうか? まずは、概要を確認しておきましょう。
そもそも「控除」って何?
「控除」という言葉には「差し引く」という意味があります。「所得控除」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。これは、ある条件を満たすことで、所得から一定の金額を差し引くことが可能になるものです。ちなみに、所得とは収入から経費を差し引いた金額のこと。
所得控除が適用されると、所得金額から一定金額が差し引かれるため、税金を計算する基となる所得金額を下げることができます。結果的に、納める税金は少なくなります。
寄付金控除とは?
寄付金控除とは、寄付金を支払ったときに適用される所得控除です。1年間で生じた所得から一定額の控除を受けられます。控除があることで、寄付をした人の所得税や住民税の金額が減ります。寄付金控除の中で有名なのが「ふるさと納税」です。
ふるさと納税は、自分で自治体を選び寄付を行うと、寄付額のうちの2,000円を超える部分について控除を受けることができます。ただし、寄付金控除には以下のような注意点もあるため、確認しておきましょう。
- 寄付金控除が認められる寄付先は限られている
- 寄付金控除を利用したい場合は、自身で確定申告を行わなければならない(例外あり)
特に、勤務先で源泉徴収という形で税金を支払っている場合は、確定申告になじみがないかもしれません。ふるさと納税をしても、確定申告を行わなければ、所得控除されないため、注意が必要です。ただし給与所得者の場合、「ワンストップ特例制度」という確定申告が不要のパターンもありますので、そちらについては、後述します。
寄付金控除が適用されるケース

寄付金控除が受けられる寄付金ですが、正式には「特定寄付金」と呼ばれています。寄付金控除は、「誰か(個人・団体)に寄付をしたら必ず受けられる」というわけではありません。寄付先も厳格に定められているため、以下の3つの条件を確認しておきましょう。
1.国や地方公共団体に対する寄付
国や地方公共団体に対する寄付は控除対象となります。ただし、学校の入学に関連するものや、寄付をした人が、その寄付によって何らかの特別な利益を受ける場合には、特定寄付金の対象にはなりませんのでご注意ください。
2.公益社団法人、公益財団法人に対する寄付
公益性のある事業を行う公益社団法人、公益財団法人への寄付は寄付金控除の対象です。
ここで、寄付先の例として「公益財団法人モラロジー道徳教育財団」をご紹介します。
1926年創立のモラロジー道徳教育財団は、「道徳で人と社会を幸せに」を指針として、倫理道徳の研究と総合人間学に基づいて社会教育活動を行っている団体です。寄付金の使い道は、以下の通りとなります。
- 青少年育成(自然体験宿泊型セミナー、エッセイ募集、地域の清掃活動)
- 子育て支援(親カフェサロン、講演会)
- 学校教育への支援(児童・生徒対象の道徳の出前授業、教員対象の道徳授業の研究会)
- 災害支援活動(被災地救援活動、復興ボランティア活動)
- シニア世代の活躍支援(講演会、健康運動教室)
- 社会人対象生涯学習セミナー(オンライン・対面)
- 企業の人材育成(新入社員教育、経営者・幹部対象セミナー)
自治体や地域社会と連携し、エッセイ募集等の教育事業、自然体験などによる青少年育成事業、地域社会の清掃・美化活動、災害時における救援活動等に役立てられています。
3.公益を目的とする事業を行う法人、または団体に対する寄付
認定NPO法人や社会福祉法人など、以下の要件を満たし、財務大臣が指定しているものに限られます。
- 広く一般に募集されていること
- 教育、または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など、公益の増進のための支出で、緊急を要するものに確実に充てられるもの
寄付をする際は、控除対象となる団体や目的となっていることを把握したうえで行うことが重要です。
寄付金控除額の計算方法

寄付金控除額の計算方法をご紹介します。
寄付金控除(所得控除)について
寄付金控除の上限額は次のうちいずれか低い金額から2,000円を引いた額となります。
- その年に支出した寄付金の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
では、以下のような人が寄付をした場合の寄付金控除額を確認してみましょう。
- 年間の総所得金額:500万円
- 年間の寄付金額:10万円
総所得金額の40%は500万円×40%=200万円となるため、この場合は、金額が低い年間寄付金額となる10万円のほうが適用されます。10万円から2,000円を引いた9万8,000円が寄付金控除の金額です。
寄付金特別控除(税額控除)について
(ⅰ)政党等寄附金特別控除は次で計算します。
その年中に支出した政党等に対する寄附金額の合計額(X) | (X-2千円)×30%= | 政党等寄附金特別控除額 |
(ⅱ)認定NPO法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。
その年中に支出した認定NPO法人等に対する寄附金額の合計額(X) | (X-2千円)×40%= | 認定NPO法人等寄附金特別控除額 |
(ⅲ)公益財団法人等寄附金特別控除は次の算式で計算します。
その年中に支出した公益財団法人等に対する寄附金(一定の要件を満たすもの)額の合計額(X) | (X-2千円)×40%= | 公益財団法人等寄附金特別控除額 |
その他にも自治体の条例で指定した団体へ寄付を行った場合も住民税の控除があります。基本の控除額は、以下のいずれか少ないほうを使って計算します。
- 控除対象の寄付金額の合計額
- 総所得金額の30%相当額
(上のいずれか少ない金額-2,000円)×10%(※)で算出した金額が住民税から控除されます。
※10%の内訳は以下の通り(指定都市に住所を有する場合はカッコ内を参照)
- 都道府県:4%(2%)
- 市区町村:6%(8%)
都道府県、市区町村のいずれかのみに指定された寄付先の場合は、4%(2%)もしくは6%(8%)の控除です。詳しくは、各自治体ホームページをご覧ください。
ふるさと納税の税控除について
ふるさと納税の控除額は、所得だけでなく家族構成や他の所得控除などで世帯ごとに異なってきます。計算方法が煩雑なため、どの程度の控除が受けられるかは、ふるさと納税ポータルサイトなどで試算してみましょう。
寄付金控除の申請方法
寄付金控除を受ける際は、基本的に確定申告を行う必要があります。確定申告は、毎年2月16日~3月15日です(土日祝日の場合は翌営業日)。確定申告書類提出の方法は、「税務署の窓口で提出」「郵送」といった方法以外にも、インターネット上から提出する「e-Tax」があります。
確定申告時に提出するものとは?
まずは、確定申告時に添付する以下の書類がそろっているか確認しましょう。
- 寄付金受領証明書
- 寄付先が寄付金控除の対象となる団体と証明する書類の写し
2021年度の寄付分から、寄付金の受領者が地方公共団体である場合(つまり、ふるさと納税である場合)は「寄付金控除に関する証明書」が発行されます。「寄付金受領証明書」の代わりに確定申告に使えるものです。もし、この書類が確定申告に間に合わない場合は、寄付金の受領書を添付してください。後日、届き次第、税務署に提出しましょう。
※「寄付金控除に関する証明書」は国税庁長官が指定した特定事業者のみ発行できます。
ちなみに、「e-Tax」で申告した場合、「寄付金控除に関する証明書」提出の必要はありません。ただし、5年間は保管してください。寄付金控除のための確定申告は、難しいものではありませんが、念のため手続き前に国税庁ホームページでも確認することをおすすめします。
確定申告不要! ふるさと納税の控除手続きについて
ふるさと納税の場合、確定申告ではなく「ワンストップ特例制度」という方法で控除を受けることもできます。こちらを利用すれば、確定申告は不要です。ただし、利用できる条件があるので気を付けましょう。
- 会社員、公務員など、もともと確定申告をする必要がない人
- 1年間の寄付先が5自治体以内であること
- 申し込みごとに「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に提出していること
申請書等の提出期限は、寄付した翌年の1月10日までです。この日を過ぎると確定申告が必要となります。
寄付金控除の制度を理解してぜひ有効な社会貢献を!
所得税や住民税の節税を考えている人にとって、寄付金控除はお得な制度です。原則、寄付金から2,000円を引いた金額が全額控除されるため、所得が大きい人ほど利用したい制度です。ただし、控除が利用できる寄付先は厳しく選定されています。また、控除される上限額は所得状況や世帯状況によって大きく異なるため、確認が必要です。
寄付を検討する際は、上限金額や寄付金控除の対象となる団体か、寄付金をどのように利用しているかなどを精査したうえで行いましょう。