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第3回公開教養講話を開催(伊藤俊幸・元海上自衛隊海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授)

伊藤俊幸講師

 

 8月13日、モラロジー研究所廣池千九郎記念講堂において、第3回公開教養講話を開催。元海上自衛隊海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏をお招きし、「最新のリーダーシップ理論~潜水艦艦長は命令しない~」と題してお話しいただきました。

 

「日本人一人ひとりは素晴らしいのに、なぜか組織に入ると嘘をつく。何が起こっているのか?」。伊藤講師はこう疑問を投げかけ、平成30年にアメリカンフットボールの名門校が引き起こした反則タックル問題を例示し、専制型リーダーシップの功罪について言及。「専制型は短期的に何かをやらせるにはすごくいいが、部下がイエスマンになる、組織にいじめや不信感が生まれるなどの問題がある。日本企業ではこれがリーダーシップだと思われてきた」と言います。

 

 また、マネジメントとリーダーシップが混同されがちな点も問題だと指摘。「マネジメントは規則をメンバーの行動に適用することで、組織の動きをコントロールする方法論であるのに対し、リーダーシップはメンバーが自発的にリーダーに従おうとする気持ちを原動力として組織を動かしていく方法論。リーダーシップ論は経営学の中のミクロ組織論の一つですが、日本では皆、学校で教わることなく大人になっています」。

 

 伊藤講師は、このように日本に悪弊を招いてきた専制型リーダーシップ論に変わるものとして、「サーバンド・リーダーシップ」を紹介。「リーダーは自ら部下たちを支えてあげる。具体的には自分よりも社員や他者に対して配慮する利他的リーダーシップです。部下の言うことに耳を傾ける、あるいは従業員の能力や幸福増進を支援する。今、スポーツ界では優秀なリーダーは皆こうしたことをやっています。方向性だけ決めて、あとはお前たちの好きなように動けと。間違ったところだけ修正するというやり方です」。

 

 そのうえで、「昨日までイエスマンだった人が急にリーダーになって部下を指導できるはずがない。今、必要なのは部下たちも他人事ではなくて、自分も考えてリーダーとともに動く『自己変革型リーダーシップ』。正しいフォロワー(部下)がリーダーになるのです」と語ります。続けて、「自衛隊の心構え『規律の厳守』」より、「真の規律とは理性ある服従の状態」との言葉を引き、「『理性ある服従』とは命令を正しく疑えということ。なんでこの人(上司)はそういう命令をしているのか、そこをしっかりと考えて、理由が肚落ちできれば『わかりました』となる。すると、やらされるのではなくて自分事としてやれるわけです。『なるほど、これは組織のためになりますね。だったら、こういうことをやってはどうでしょうか。あとは私に任せてください。どんどんやりますから』となる。自衛隊というと『いいからやれ』という組織と思われるでしょうが、実はこういう考え方があるのです」。

 

 自ら進んで行う力を伸ばすため、自衛隊では部下(フォロワー)からの進言(リコメンド:「○○なので、○○します」)で組織を動かすといいます。「(講演タイトルにあるように)潜水艦艦長は命令しない。部下がリコメンドする。それに対して、艦長が発するのは『了解』か『待て』の言葉だけ。リーダーの仕事は『正しい意思決定』なんです。どんどん部下たちに言わせる体制をつくるのです」。

 

 このほか、相手を動かすためのコミュニケーション力、豊かな人間性を育むための指導法、危機における行動力など、自衛隊で培った独自の考え方を披露。最後に、「大谷翔平はなぜ世界で通用するのか――それは高校時代から常に自分で考えてきたから。若いときから自分で考え行動する癖をつけることが大切」と重ねて語り、締めくくられました。

 

明るい笑顔で講演

 

リーダーシップ理論を展開

 

会場は満席に

 

【講師プロフィール】
元海上自衛隊 海将、金沢工業大学虎ノ門大学院教授
伊藤俊幸

 

1958年生まれ。防衛大学校機械工学科卒業、筑波大学大学院地域研究科修了。潜水艦はやしお艦長、在米国防衛駐在官、第二潜水隊司令、海幕広報室長、海幕情報課長、情報本部情報官、海幕指揮通信情報部長、第二術科学校長、統合幕僚学校長を経て、海上自衛隊呉地方総監を最後に2015年8月退官。
■専門分野:リーダーシップ論、組織論、安全保障論、メディア論、国際関係論、危機管理
■受賞:防衛駐在官勤務の功績に対し米国防長官より勲章「The Legion of Merit」 海幕部長勤務の功績に対し米国防長官より勲章「The Legion of Merit」
その他専門情報: 国際安全保障学会理事、日本安全保障・危機管理学会理事。

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