平成29年10月8日(日)、廣池千九郎記念講堂において、本年度第3回目の公開教養講話を開催。今回は奥州市立後藤新平記念館前館長の髙橋力氏に「日本の将来を見据えた後藤新平」と題して講演いただき、モラロジー生涯学習講座の受講者と一般参加者合わせて約130名が聴講しました。
来年度から学校で道徳の教科化が始まることに対し、何故、今、道徳教育が必要なのかとの疑問を投げかけ、髙橋氏は「日本人が道徳を忘れてしまっているから」との考えを述べました。道徳実行の効果を科学的に研究する学問(モラロジー)を提唱した廣池千九郎(1866~1938)、生物学原理をもって自治の精神・人材育成に力を注いだ後藤新平(1857~1929)の共通点は、共に同じ時代を生きたということだけでなく、平和と幸福を願う精神道徳、ことにそれを教育(人材育成)によってなし遂げようとしたところにあると紐解きました。
後藤新平が生涯にわたって語り続けた『自治三訣』について、①自分のことは自分で、②自主的に社会奉仕を、③国の発展のために自分の身を使うこと、とわかりやすく解説。“大風呂敷”や“時代の先駆者”などと呼ばれていたこととともに、その概歴、また主な功績についても紹介しました。
中でも、“大風呂敷”と呼ばれた所以は、後藤が関東大震災発生時の復興事業を担う内務大臣となり東京を近代都市化させるのに絶好の機会と考え、わずかの時間に今後の震災に備えて幹線道路、区画整理等の先見性あふれるプランを計画したことによるもので、堅実にそれを実行したと説明しました。
「自分からあいさつをし、自分からありがとうと言える人になっていただきたいし、そういう人材を育てていっていただきたい」と聴講者に呼びかけ、講演を締めくくりました。
前・奥州市立後藤新平記念館館長
髙橋力(たかはし ちから)
昭和23(1948)年、岩手県水沢市(現・奥州市)生まれ。42年、水沢市職員として入庁。48年、富士短期大学通信教育部経済学科を卒業。平成21(2009)年、奥州市職員を定年退職し、奥州市水沢地域交流館館長に就任。また、24年に拓殖大学大学院地方政治行政研究科を修了。同年より奥州市立後藤新平記念館館長を務める。27年より地方政治行政ガバナンス研究室主宰。28年より拓殖大学地方政治行政研究所客員教授。29年3月、後藤新平記念館館長を退任。陸中一宮駒形神社総代。