令和元年5月4日(土)より、モラロジー研究所柏キャンパス(千葉県柏市)において、天皇陛下御即位奉祝記念特別展が開催されます。
それに先立ち、5月3日にはオープニングセレモニーが行われ、会場前において秋山浩保・柏市長、野本 勲・元東宮侍従、銭谷眞美・東京国立博物館館長などの来賓によってテープカットが行われました。
本特別展では、江戸時代から明治・大正・昭和・平成・そして令和へと続く即位儀礼を中心に、模型や写真、装束などをもちまして、不易〈ふえき〉と流行 ―変わらない本質と進取の精神― を探求しています。
*即位式に見る文化と伝統
即位式は、天皇の即位を内外に宣明する儀式であることはいうまでもありませんが、その長い歴史に培われた文化的価値は極めて高く、伝統継承の意味を現代に伝えるものといえるでしょう。
東山天皇(江戸時代)の御即位は、御父・霊元上皇の尽力により大嘗祭が200年ぶりに再興するなど、歴史的な意味が深く、展示中の屏風(複製)のほかにも詳細な記録が残されています。そのため式の構図や次第が明らかであり、忠実な再現が可能となりました。これを立体化することにより、当時の即位式の特色をより実感することができます。江戸時代の即位式は、中国的な色彩が強く、現在では見られない設備や装束があると同時に、高御座をはじめとして現代へと一貫するものがあることにお気づきいただけるでしょう。
即位式は、明治の「復古」と「一新」の時代を迎えるにあたって、それにふさわしい形に改められました。中国風な旛旗〈ばんき〉類に代えて榊に布を垂らすなどの日本の原初的な形式を用い、庭上には香炉ではなく大地球儀を置いていることなどが絵図からご覧いただけます。
京都の紫宸殿において行われた大正の即位式は、伝統と近代文明が融合した明治の英知の結集といえます。江戸時代までの即位式の長所も取り入れられ、日本的な伝統美とよく調和しています。昭和の即位式もほぼ同じ形式で執り行われました。
平成から即位式は東京の皇居・宮殿で行われることとなり、一部意匠の変更もありましたが、写真や絵画でご覧いただけますように、殿内も庭上も基本的な装束類は大正の即位式の形を継承しました。
このように、各時代の即位式を一堂に見ていくことにより、伝統の継承と近代的な展開の様子が解され、即位式の意味がより浮き彫りになることと存じます。
*天皇の装束
この度は、即位儀礼で用いられる天皇の装束のうち、主要な3点、御束帯〈ごそくたい〉黄櫨染御袍〈こうろぜんのごほう〉、御祭服〈ごさいふく〉、御引直衣〈おひきのうし〉を展示しています。
黄櫨染御袍は、即位礼正殿の儀をはじめ、年中の宮中祭祀などでも用いられる天皇の代表的な装束ですが、そのほかに、特に御祭服や御引直衣が使用されることがあるのは、それぞれの儀式の格別な意味や装束の歴史的重要性を表しています。
*女性の装束
平成の即位礼正殿の儀は、「式全体が荘厳に行われ、特にカラーコンビネーションがすばらしく壮麗であった」(デンマーク・マルグレーテ女王)、「伝統に則った儀式は絵のように美しく、女性皇族の衣装が特に美しかった」(スイス・フェルバー連邦参議兼外相)と参列した海外の要人から語られているように、日本の伝統美が世界に知れ渡る機会でもありました。「十二単」はその象徴的存在です。
このほか、即位儀礼に用いられる品々の美しさや精巧さからは、歴代天皇の皇位継承とともに受け継がれてきた文化財的価値が認められるものと存じます。
この度の展示を通じて、皇室を戴く我が国の歴史と文化、そして皇位継承儀礼の意味を考える機会となりましたら幸いです。
※日本テレビのオフィシャルサイトから、紹介されたニュース映像を見ることができます。