道徳科学研究センター生命環境研究室の立木教夫客員教授が、
『心-脳研究とモーラロサイエンス』を麗澤大学出版会より刊行いたしました。
定価:2,592円
<著者より>
道徳における難問の一つに、他者理解という問題がある。1990年代前期に、サルの脳でミラーニューロンが発見され、まもなくヒトの脳でもミラーニューロンシステムが発見されことにより、他者理解の科学的理解が可能となった。運動の文脈で発見されたミラーニューロンシステムは、感情の領域にも、体性感覚の領域にも存在することが発見され、シェアードサーキットという概念で包括された。シェアードサーキットは、人間の他者理解を支える心-脳システムである。人類は、約700万年の進化のプロセスにおいて、このような心-脳システムを包含する、道徳的情報処理システムを獲得した。最近、脳科学者と進化生物学者が手を携えて、そのようなシステムの獲得過程の解明を目指した論文集を出版した(注1)。現代科学は、道徳という複雑な研究対象と取り組み、着実に、成果を生みだしている。本書では、このような科学研究の成果のいくつか取り上げ、道徳の科学的研究の一端を示すとともに、そのような研究を可能にした脳のイメージング技術と、近未来の道徳問題、つまり、ロボットの心の問題を取り上げた。
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全体の目次は以下のとおり。
第1章 ミラーニューロン―共感の脳神経科学的基盤
第2章 シェアードサーキット―共感から利他へ
第3章 モーラルブレイン―道徳の認知神経科学と進化生物学が拓く知見
第4章 イメージング―計測技術の進歩
第5章 ロボット―ロボットに心を感じてしまう人間の心
注1、Jan Verplaetse, Jelle De Schrijver, Sven Vanneste, Johan Braeckman, Editors, The Moral Brain: Essays on the Evolution and Neuroscientific Aspects of Morality, Springer, 2009. ヤン・フェアプレツェ、イェレ・デ・シュリーファー、スヴェン・ヴァネッツェ、ヨハン・ブレックマン編、伊東俊太郎序文、立木教夫・望月文明監訳『モーラルブレイン:脳科学と進化科学の出会いが拓く道徳脳研究』麗澤大学出版会、2013年。