「心づかいQ&A」

ニューモラルで人気のコーナー。
モラロジー研究所の玉井哲講師が、さまざまなお悩みに答えます!!

 

Q:会長職を引き受けるべきか?

数年来、軽い付き合いのあった近隣の里山自然公園を守るNPO法人で、会長を引き受ける人が誰もいないという理由から、私が頼まれました。しかし、私はそのような器でもなく、家族(妻、老親)も強く反対しています。そのような状況で無理に引き受けても、よい結果が生まれるとは思えません。どのように考えたらよいのでしょうか。アドバイスをお願いします。(60代・男性)

A:感謝し、楽しむ「心のゆとり」を持って判断を

NPO法人の会長職に推薦されたものの、自分としてはその器ではないと思い、また家族の反対もあって、断りたいと考えておられるようです。しかし、「なり手がないんだよ」と頼まれると、不安に思いながらも承諾したほうがよいのだろうかと、心が揺れているのですね。
社会人としての公的な職業生活が一段落し、知人との縁などから楽しんで社会貢献をしようと、その団体と付き合ってこられたのでしょう。しかし、会長となると責任が重くのしかかり、付き合いもこれまで以上に求められます。慣れない立場になることには、誰もが不安に思うものです。役割に忙殺され、人間関係に気をつかい、自分のゆとりの時間がなくなるとなると、しりごみされるのもよく分かります。
数年来の付き合いがあった団体とはいえ、あなた自身にその気がなければ、気にすることなく断ることができるのではないかと考えます。要請を受けたことに責任を感じておられるのは、推薦者との個人的な関係とともに、NPO法人の理念に共感し、活動を継続していきたいという気持ちが心のどこかにあるのでしょう。自分の力量に慎重で消極的な判断をしている面と、社会に役立つことをしたいという気持ちが、心の中に葛藤を生んでいるようです。
人間というものは、いくつになっても成長するものであり、意義ある人生を送りたいという意欲がなくならない限り、問題に直面しては悩むものです。しかし、それを乗り越えるたびに心地よい緊張感と充実感を味わうことも事実です。若い時代であれば、理想と現実、目標と自分の実力とのギャップに悩みながらも、少々の苦労や失敗があっても挑戦しようと決断し、その体験を通じて成長していくものです。
あなたは今日まで、どのように人生を歩んでこられましたか。消極的に、より安全な道を選んでこられたのでしょうか、それとも積極的に挑戦してこられたのでしょうか。また、今後の人生はどちらの道を歩んでいこうと考えておられますか。ご家族は無理をしてまで挑戦することはないと考え、無難な道を勧めているのでしょうから、あなたがはっきりとした意思を持っていないと、今回の場合、明確な判断を下せないことになります。
いずれにせよ、「自分の判断に対しては誰も責任を取ってくれない」ということをよくわきまえて、「自分の人生に感謝し、楽しむ」という心のゆとりを持って判断されればよいでしょう。会長職を引き受けるか否かにかかわらず、自分の道に自信を持って進まれることをお勧めします。

平成29年11月号

 

Q:約束を破る人が許せない

長年の疑問についてお尋ねします。約束を破る人についてです。会う約束をしていた友人から直前になってキャンセルされ、ひどいときは1人で旅行をしたこともあります。約束を破った友人は悪びれた様子もなく、私はいつも傷ついたり怒ったりです。私は小さな約束でも守れるように、念入りに事前の調整をするのですが……。予定の変更は仕方のないことかもしれませんが、相手に軽んじられているのではないかと思うことがあります。どのように受けとめたらよいでしょうか。(40代・女性)

A:勇気を出して気持ちを伝える努力を

長いお付き合いのご友人なのでしょうか。普通、約束を破ったり破られたりすると、お互いにいやな気分だけが残るものです。でも、あなたの友人は約束を破っても悪びれるところもなく、あなたの苦痛や怒りにも頓着せずに、「ごめんなさい」とあっさり済ませる人のようです。あなたは不審を抱きながらも、その友人とは仲よくしたいという思いもあり、自分の気持ちを訴えることもできず、対応に悩んでおられるのでしょう。
今のあなたは、自分の受けとめ方を変えることで、なんとか解決していこうと考えておられるようです。しかし、このままでは友人と対立はしないものの、よい関係が長続きするようには思えないのですが、どうでしょうか。
ほかの人から不適切な行為や態度を受けた場合、どのように対応するかによって、あなた自身の健全な成長を左右するということは、あなたも気づかれているでしょう。大切な人であればあるほど、相手を尊重しつつ、理解できないところは丁寧に聞き、相手の思いや事情に耳を傾け、理解し合うという基本的な姿勢を持ちたいものです。
あなたが今、友人に対してそのような態度が取れない、あるいは友人が耳を貸そうとしないのであれば、それはあなたにとっても友人にとっても不誠実な人間関係であると言わざるをえません。それはお互いに大切な成長の機会を放置していることになりましょう。
人には自分1人では気づけない短所や長所があるものです。でも、相手の短所ともいえる考え方や態度を無理やり変えようとするのは心地よいことではなく、人間関係を壊してしまうことにもなりかねません。あなたにとって大切な友人であれば、なおさら相手を心から尊重しながら、語り合い、学び合い、成長し合うという努力をしてほしいと考えます。
今までも何度か同じような苦い体験をしてきて、今さらそんなことはできないとお考えになるかもしれません。しかし、私は慎重に自分自身に挑戦していただきたいと思います。人間はいくつになっても人間的に成熟するもので、あなた自身が成熟し、相手と理解し合った分だけ、生きる喜びや充実感が増えると確信するからです。
あなたはこれまで自分の気持ちを抑え、相手の自発的な善意を待つという消極的な態度を取ってこられたようです。しかし、ここは友人と親しく語り合うチャンスをつくって、あなたの素直な気持ちを丁寧に聞いてもらってはどうでしょうか。結果を案ずるのではなく、勇気を出して、あなたの気持ちを伝える努力をしてみてください。自分の誠意を伝えることで、自分に挑戦してみてください。きっと新しい自分に出会うことができるでしょう。

平成29年10月号

 

Q:自分らしい人生を歩みたい

2年前に離婚しました。元夫の事業不振や育児に対する考え方の違い、姑からの心ない言葉。笑顔があり、くつろげる家庭をつくろうと努力しましたが、心の休まる日はありませんでした。私が2人の子供を育てていますが、時期をずらして不登校になり、私自身も苦悩の中で人生を振り返りました。元夫は転職し、少し変わったようです。家族4人が元に戻って温かい家庭を築くべきと思う一方、子供が自立したら自分らしい人生を歩みたいとも思います。このような考えは罪深いのでしょうか。(40代・女性)

A:子供を育て上げる責任を第一に

2年前に子供を連れて離婚し、1人で子育てに苦心されているとのこと。努力はされたのでしょうが、夫の事業不振というタイミングの悪さもあり、夫や姑との関係がこじれて離婚に至ったようです。
一般的に40代は、仕事においても家庭内においても認められたいという社会的欲求が出やすい時期です。あなた方の場合、その欲求が相手に向いたうえ、子供たちの自立の問題や、姑からの期待がからまって、破局に至ったのでしょう。相手への期待が大きければ大きいだけ、自分の感情を抑えきれなくなるものです。その結果、相手を攻撃したり絶望したりという結末を迎えることになったのであれば、残念なことです。
しかし時間と距離を置いた今、あなたは少し冷静さを取り戻されているようです。その後、転職した元夫が落ち着いていることや、2人の子供の不登校によって、夫婦の協力の必要性を実感され、家族4人での生活を再考されているようですね。
復縁があなたの望むように実現するかは分かりませんが、ここではあなたの心が前向きになっているようですからあえて申し上げます。
まず、可能な限り、親は2人して子供を正しく育て上げる責任あることを銘記したいものです。結婚をして子供が授かったあなた方には、子供を立派に自立させるまでの義務があり、これを他人任せにしてはならないと考えるからです。
どのような夫婦も、時折、対立や苦悩から逃げ出したくなることがあるものです。しかし、この苦悩を克服することなしに、お互いの人間としての成長や喜びは得られません。あなたの「自分らしく自由にふるまい」たいという思いも、共に喜びを分かち合う相手がいなければ、その自由はむなしいものです。
子供を育て上げた後で、あなたがどのような生き方を選ばれるかはお任せしますが、離婚を前提にして、子育ての間だけ辛抱するというのでは、それは真の愛情ではありませんから、悲しい結末に至りましょう。ここは冷静に2人して、これからの子供たちの人生について語り合いたいものです。そうする中で、相手が自分に向けてくれた思いやりにも気づき、お互いを認め合い、許し合い、尊重し合うことがどれほど大切であるかに気づかされるでしょう。
他者と対立したときは、相手への要求心が大きすぎたことを反省する以外に事態を好転させる道はありません。子供たちの健全な成長を第一に、自分自身の人生ためにも、勇気を出して歩んでください。

平成29年9月号

 

Q:海外で働く娘が心配

20代の娘は昨年、海外にある会社に転職しました。海外で働くことは学生時代からの夢だったようですが、最近はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス=インターネット上の会員制サービス)で「この国に貢献することが私の使命」と公言しています。親としてはそこまでの覚悟とは思わなかったため、困惑しています。連絡しようにも途上国なので、電話がなかなか通じず、手紙も届いたり届かなかったりします。どうしたらよいでしょうか。(50代・主婦)

A:覚悟と祈りをもって見守りたい

若い人々が海外へ雄飛し、世界中の人々の中に入って人間関係を築きながら仕事をし、協調と平和を実現していく時代です。娘さんは学生時代から海外で働くことを夢とし、今では「この国に貢献することが私の使命」と公言しておられるというのですから、目標に向かってたくましく生きておられることに、まずは敬意を表します。
とはいえ、国内とは事情も違って、親としては心配の種が尽きることはないでしょう。安心と安全がかなり保障されている日本で暮らしていると、海外での生活に不安を感じる気持ちも分からないわけではありません。
しかし、少し冷静に考えると、どの国にも善き人がいれば悪しき人もいるわけで、不安ばかり抱いて足を引っ張っていても、娘さんの人間的な成長を妨げることになるでしょう。ここは娘さんの危機管理能力を信じつつ、案じながらも前向きに、親子共々が国際的日本人になるという覚悟をする機会ととらえていただきたいと思います。
今日では国内にいても海外にいても、危険はいつも隣り合わせです。どんなに安全に気を配っても、現実の社会において、何事に遭遇するかは計り知れません。だからこそ国家は自国民の安全に、また、それぞれの集団はそれぞれの場面での危機管理に最善を尽くすのです。
日常の経済活動を中心にグローバル化が進み、私たちの生活が自由と多様性に向かっていく限り、究極的には個人が正しい道徳的判断力とたくましく生き抜く力を養い、自己管理をしていく覚悟が不可欠になっています。
今や私たちは、言葉や生活習慣、生活信条や信仰など、さまざまに異なる価値観の中で、平和を実現するために、互いに尊重し合い、信頼をもって共存することが不可避な時代に生きています。各個人の人間力も、重要性を増しています。そしてこれらの力を使って、共に今を生きている人々と心のつながりを保ちながら、互いの「いのち」の根源といえる自然や国家や家族への愛を実現していく必要があります。
娘さんはそんな意志を持って、海外で、現地の人たちと共に、生きる喜びを分かち合おうとしておられるのではありませんか。祖国への誇り、家族との絆、他者への愛情を抱きつつ、今、目の前にある使命に挑戦されているとすれば、「少々のことがあっても大丈夫」という覚悟を持って、見守ってあげてもいいのではないかと考えます。
一人ひとりが自分の天賦の才を生かし、天命に生きる時代が到来していると理解し、不安を祈る力に変えて見守っていく勇気を奮い起こしていきたいものです。

平成29年8月号

 

Q:職場の先輩の態度に悩む

私の勤め先は、社員十数名の会社です。勤続年数の一番長い女性は、日ごろから好き勝手なふるまいをしており、自分の意に添わないと、あからさまにいやな態度をします。例えば、気の合わない人の前では、わざとらしくマスクをして、口をききません。このことはほかの社員もおかしいと思ってはいるのですが、面倒なことに巻き込まれるのを恐れて注意もできないのです。今の状況を改善するには、どうしたらよいでしょうか。(20代・男性)

A:自分の職務に明るく徹するところから

勤続年数が最も長い先輩女性のわがままに、周りの従業員は不愉快な思いをしながら耐えておられるようです。あなたはなんとかしたいと思いつつ、どのように関わっていけばいいかが分からずに困っておられるのでしょう。
勤め先の上司や先輩、時には同僚の自由気ままなふるまいに悩まされることは、よくあることです。特に経験が浅いうちは、人間関係ばかりが気になって、自分を見失ってしまうことさえあるものです。
社内の就業規則が明確になっている場合は、不快でわがままな行為を律するという雰囲気もつくりやすいのでしょうが、そうでない場合、あなたのような存在は、会社にとって宝物です。小さな人間関係の問題とはいえ、大切な生活の場である職場環境の問題を放置しておくのは賢明とはいえません。しかし、相手を変えようとするのではなく、自分の周囲との関わり方を変えていき、徐々に職場の雰囲気をよくしていくように努めましょう。
ただ、一人でなんとかしようと考えるのはやめましょう。先輩や仲間の協力なしには、うまくいかないでしょう。そして、あなた自身は新しい自分に挑戦する好機と考えて、まず職場での自分の責任の果たし方について見直してみましょう。
当面の目標は、先輩女性に態度を改めてもらいたいということですが、現実的には、皆が協力し合って会社の社会的使命を果たしやすい職場の雰囲気をつくることにあるわけですから、この問題から少し距離を置くことも必要です。
どのような人も、他人には言えない個人的な悩みを抱えているものです。他人に不快感を与えずにはいられないようなつらさを抱えておられるのかもしれません。当人も、本心では他人とうまくやっていきたいと考えておられるのでしょうが……。非難する気持ちからは、人の和は実現されません。
この問題を改善していくには、当の本人を悪者にすることなく、大きな心と粘り強い忍耐力と、仲間への信頼感を持続することが求められます。多少時間はかかっても、その先輩の心の味方になり、まずは明るい挨拶、快い返事、謙虚な仕事ぶりを通して、職場の雰囲気をよくすることを念頭に、今、目の前にある仕事に情熱を傾けてください。焦ることなく、邪を破らず誠意をもって、誰もが職場に来ると元気になれる雰囲気をつくる努力をしましょう。
職場の問題を一つずつ、自分の課題として解決していくその姿勢は、あなたを人間的に大きく育ててくれるでしょう。試してみてください。

平成29年7月号

 

Q:親の責任を迫る引きこもりの息子

私どもは3人の男児に恵まれました。現在、40代の長男は他県で家庭を持ち、30代後半の次男・三男と同居しています。三男は小学生のころに不登校になり、現在は引きこもり状態です。最近は「自分がこうなったのは、『善悪の判断』や『正々堂々とした態度』を教えてこなかった父親に責任がある」と迫るようになりました。私は親として、どのように償うことができるでしょうか。息子の将来のために、何をしてやれるでしょうか。(70代・男性)

A:すべてをかけて、もつれを正す勇気を

30代後半になるご子息が、小学校時代からの不登校に始まり、今では引きこもりの状態になっているとのことです。本人も長い年月を経て、なんともやるせない気持ちが募り、その原因を「親が正しい教育をしてくれなかったからだ」と責め立てているようですね。親としても、いろいろ手を尽くしてきたものの、今もって自立できないでいる息子に、自分たちの未熟さを反省しつつも、なんともしてやれない現状への無力感が、いたく感じられます。
何が原因であるかは別にして、親が責任を回避すれば、事態は時の経過と共に悪化するばかりです。ここは「子供たちと共に事態を受けとめよう」という、プラスの覚悟が必要です。
戦後の高度経済成長期を生きた私たちの世代は、自由に物の豊かさを実現することをよしとする空気の中で育ちました。しかし、自分自身が親の立場になったとき、子供たちの心の成長に十分な配慮をしてきたかと顧みますと、さまざまな試練や葛藤に「持ちこたえる力」を養わずにきてしまったのかもしれません。残念なことですが、ご子息も青少年期の心の葛藤をうまく克服できず、自然に発達する自意識や自尊心に対し、心が調わぬまま成人していることになります。親として、してやれることは限られ、子供との対立や抵抗も、時と共に大きくなっているのを実感されていることでしょう。
ここは、専門家の手を借りることが必要です。精神科医やカウンセラー、さらには地域の自立支援センターなどとも相談し、本人の意思で動き始めるように導く道を探りましょう。冷静に過去を受けとめ、自分自身を取り戻すことを目標に、自分で歩み始めることを支えてくれる人と出会えることが、現状を打開する鍵になるからです。
このような他人の援助は不可欠ですが、その基本は家族みんなの足並みです。親の責任において、家族全員がこのもつれた糸をつむぎ直していく覚悟を共有したいものです。なんといっても両親と子供たちとの間に、お互いの愛情と信頼と尊敬を取り戻す機会にしてほしいのです。
長い間に複雑化した問題を正し、心の傷を癒していくには、不退転の覚悟が必要です。しかし、あなたが全身全霊をかけて、子供の将来のために祈り、どんなに誹謗されても家族と共に人生を全うするという粘り強い親心を持って歩む限り、運命の神は決して見捨てることはないと信じます。
どうか心を正して、苦悩のうちに犠牲を払うことを喜びとして、大きな勇気を持って歩んでくださるよう祈ります。

平成29年6月号

 

Q:友人の将来が心配

私の友人は、中学のときに途中で部活動を退部、高校2年生のときにはついに中退してしまいました。「将来は料理人になりたいので、それ以外のことに時間を取られたくなかった」と言っていましたが、ここ数年は引きこもりの状態が続いています。高校中退後も10年ほど友だち付き合いがありましたが、昨年、私がきつく説教をしてしまい、以来、絶交状態にあります。これから私は、彼が独り立ちするのを待つべきでしょうか。あるいは何か、はたらきかけるべきでしょうか。(20代・男性)

A:友人と共に成長しよう

20代後半になった引きこもりの友人に、なんとか手助けをしたいが、どのようにはたらきかけていけばいいかと案じておられる様子です。
詳しい経緯は分かりませんが、中学生のときに部活を退部し、高校も中途退学をしたということですから、そうした挫折の経験がその後の生き方に影を落としていることは否めないようです。また、料理人として生きていくことを目標にしながらも持ちこたえられず、今日に至っているというのは、当人としても、思うようにいかない人生に落胆しておられることでしょうね。
無二の友ともいえるあなたも、そのような状態の友人を励ましたくて、結局は説教をしてしまい、絶交状態になっているということです。
現実の厳しさを考えますと、本人だけの努力で独り立ちすることは難しいように思えます。さらには、そこに第三者の協力があったとしても、彼自身に前向きな姿勢と覚悟がわいてこない限り、一人の人間として自立していくことは難しいという点を、あなた自身が認識しておく必要があるでしょう。
いかに親身になっても、他人がその人になり代わることはできないのですから、支援することにも限界があります。また、私たちは、自分の成育過程において達成しておかなければならない課題があり、その時機を逃すと、年齢が加わるにつれて、ますます自立することが難しくなるという事実をわきまえる必要があります。
ここは、あなた一人の力でなんとかしようと考えるのではなく、あなたとその友人の持っている資源(知的・道徳的・体力的・精神的特質、さらには協力者など)について理解をし、共に考えてくれる両親や恩師、信頼できる先輩などの力を借りることを考える必要があります。
「鉄は熱いうちに打て」とは古来の名言ですが、幸いまだ20代。やり直しがきかないわけではありません。友人の心に火を点ける何者かに出会わせることができるかどうかが問題です。このままずるずると過ごしていては、明るい未来は開けません。
その気持ちを切り替えさせるには、まず友人を外に引き出し、体から友の心を動かしていく必要があります。具体的には「話し合う」「旅をする」「行をする」「人に会う」ことがお勧めです。あなたがそうした時間を彼と共に過ごせれば最高です。友人が今、みずから相談できる相手を持っていないとすれば、あなたが彼の心の友となるよう心がけてください。
もちろん、あなた自身も自分の人生を着実に歩み、信頼して相談できる親や仲間との絆を強めていくことを忘れてはなりません。友人と誠実に関わる中で、共々に人間的に成長されることを祈っています。

平成29年5月号

 

Q:国際結婚の是非

私には同じ会社で働く外国人の恋人がおり、交際5か月目でプロポーズされました。しかし、母と祖父母は「外国人だから無理なものは無理」との一点張りで、猛反対です。彼をわが家に招待したときは、楽しく談笑していたにもかかわらず、「この結婚を進めたら親子の縁を切る」とまで言われています。私は、グローバル化が進む今、結婚に国籍は関係ないと思うのですが、将来、子供ができたときに家族の仲が悪いのはよくないとも思い、不安を感じています。(20代・女性)

A:親を非難するのではなく、しっかり自立を

外国人の恋人との結婚について、お母さんやおじいさん、おばあさんに猛反対され、立ち往生していらっしゃるようです。
結婚という人生の一大事に、最愛の人と巡り会うことができたのであれば、すんなりと祝福してあげてもいいのでは……というのが第三者の気持ちです。しかし、ご家族にとってみれば、まったくの異文化の人との生活を思うと、さまざまな不安と戸惑いを抱かれることも容易に想像できます。
今日、私たちの生活はグローバル化が進み、諸外国の人々との交流の機会が増えています。異文化間の対話や相互理解、相互協力なしには、それぞれの国家や地域の発展を実現しがたい時代に突入しているといってよいでしょう。そのような中で出会う男女に、言葉や文化の違いを乗り越えて互いを信じ、愛し合える人間力があったなら、国境を越えた恋愛に進んでいくケースは、これからもますます増えていくことでしょう。
しかし、今回のあなたのような結婚ということになりますと、あなた個人の問題にとどまらず、あなたのご家族がどれほど異文化の慣習に適応できるかということもポイントになります。ご家族の反応をうかがう限り、慣れ親しんだ日本的な生活以外には想像できないほどの不安を感じ、「それなら親子の縁を切る」という拒絶反応が出るのも不思議ではありません。
ただ、冷静なご家族のようですから、頭ごなしに反対しているように見えたとしても、あなたを育ててきた親だからこその強い思いがあるのかもしれません。あなたがこの結婚に対して、どのような苦労があっても耐えていけるだけの覚悟はあるのかと、身を切る思いで問うておられると考えることもできるからです。
あなたにとって、とても大切な彼であるとすれば、なおさら冷静に、決して短慮に走ることのないよう、少し時間をかけることにしてはいかがでしょうか。交際を始めて5か月という期間を考えると、反対されるご家族への配慮、あなたにもある「子育てや家庭不和への不安」の解消、そして彼の家族に対する配慮も必要です。ここは彼との交際を大切に継続しながら、周囲の人々に少しでも安心を与えられるよう、2人して努力されることをお勧めします。
もし、あなたが親の反対をバネにして、真の大人としていっそう深く親の思いを見つめ直し、自分たちの思いも理解してもらえるように粘り強く努力をするのであれば、最後は誰も反対できるものではないでしょう。
要は、自分たちの結婚を考えるだけでなく、誠心誠意、親に安心を与えられるよう、本気で行動できるか否かに、あなたの人生のすべてがかかっていることを心得てください。応援しています。

平成29年4月号

 

Q:皆に分かってもらうには

私は最近、否定的な言葉や人の悪口を言えば、運気は悪い方向に流れ災いを招くと知り、愚痴も含めて言わないようにしていました。しかし、職場の同僚からは、あまりいい感じを持たれません。確かに以前の私は、その同僚と一緒に人の悪口を言ってストレスを発散していましたが、今や猛反省したのです。同僚にもこのことを知ってほしくて「思いやりの心が自身の運勢を好転させる」と伝えたことで、かえって自分の立場を悪くし、ぎくしゃくしています。どうすればよいでしょうか。(50代・女性)

A:まずは徹底して自分に挑戦を

「否定的な言葉や人の悪口を言うことが自分の運勢を悪くする」と知って、自分なりの努力をしてこられましたが、周りの人には好意的に受けとめてもらえないのですね。なんとか思いを伝え、皆にも幸せになってほしいと思って話したことで、かえって反発を受けてしまったようです。
周囲に思いやりの心を広げていこうとすること自体は、よい心がけであると同感しますが、その場の雰囲気や他人の生活態度を変えていくには、相応の忍耐力と時間が必要です。
たいていの人は、自分のふだんの言葉づかいや態度、さらには考え方を変えるように押し付けられていると感じたときには、本能的に反発するものです。これは、高邁な政治・経済のことから家庭や職場の人間関係に至るまで、どんなに正しいと思えることでも、何か新しいことを試みようとするときには、すべての人が同じように賛成し協力してくれるものではないということでもあります。
人には、それぞれ自分なりの考えや事情があり、自分に都合がよければ賛成するといった自己中心性(わがまま)を持っているものです。自分を変えていきたい、そして周りの人ともうまくやっていきたいというあなたの思いは、間違ってはいないのですが、今のままでは周囲の人から「迷惑な人」というレッテルを貼られてしまいかねません。
あなたのように、自分の行いを正して周りの雰囲気をよくしていこうと努力する人があってこそ、社会はよくなるのですから、あなたには負けてほしくないですね。
しかし、そのためには相手を変えようとか説得しようというのではなく、それなりの冷静さと粘り強い覚悟をもって、まずは自分を変えていく努力が必要です。あなたが「自分の言葉や態度が運勢を変える」と気づかれたのは間違ってはいないとしても、あなたは少し焦っておられたのではないでしょうか。その言葉を伝えられた同僚が、決して快い感情を抱かれなかったのですから。
皆に分かってもらうには、自分の存在が周囲から好意的に受け入れられるということが基本ですから、あなた自身が優しく温かく、気持ちのいい空気のような存在になることが肝要であると考えます。
したがって、あなたには、自分で気づかれたことを大切に積み重ね、「否定的な言葉や悪口を言わないことで、人間がこんなに明るく、生き生きとしてくる」ということを、その生きる姿で表してくださることを願います。
人は変われるものだということ、そして、その変わった分だけ喜びを味わえるものであるということを、粘り強く示し続けていってください。

平成29年3月号

 

Q:子供を授からなくても強く生きるには

私には持病があり、子供を授かっておりません。昨年までヘルパーをしていましたが、利用者さんに子供がいないことをなじられ、仕事を辞めました。それ以前の職場でも、繰り返し子供について質問され、長続きしませんでした。正直に病のことも言えず、その人たちをいつまでも恨む日々です。今では人と関わるのが怖くなり、外に出て仕事をする気力もなくなってしまいました。興味本位の人には、どのように対処したらよいでしょうか。子供がいなくても、強く生きていけるでしょうか。(40代・女性)

A:与えられたいのちを受けとめよう

結婚はしたものの、持病のために子供を授かることができない中で、精いっぱい仕事に励んでこられたあなたは、心ない人から冷たい視線や非難めいた言葉を浴びせられ、反論もできずに身を引き、自分の殻に閉じこもりつつあるようです。
一般的には、社会的弱者やハンディキャップを持つ人々への配慮や支援への意識は高まりつつあります。しかし一方で、あなたのように理不尽な思いをされることがあるのも事実で、とても悲しいことです。
今日、科学技術や医学・心理学・生理学等の進歩発展には目を見張るものがありますが、不断の研究にもかかわらず、難病はなくならない状態です。あなたは持病を克服すべく努力されているのでしょうが、なんとも乗り越えられない病気にさいなまれ、苦悩されているようです。
非情のようですが、あなたに与えられた現状を受け入れる以外、前向きに生きる道はないと覚悟する必要があります。ここでは、周囲の理不尽な態度や言動に対して、あなた自身が強い気持ちで生活を全うできるよう、同時に、あなたの態度によって少しでも社会が明るくなるように、一緒に考えてみたいと思います。
ただ、これは決して容易な道ではありません。持病があることに対して、あなた自身が引け目を感じていては、どうにもならない問題であると自覚していただきたいと思います。
人間には、他人の弱みにつけ込んで、自分の弱さや理不尽さを正当化しようとする性質があります。しかし、真に自分の弱み(あなたの場合は持病)を受け入れている人に対しては、よほど悪意のある人でない限り、素直に思いやりの心を発動するものです。
あなたの場合、どうしても子供が授からない状態であるとすれば、それはあなたのせいでも誰のせいでもなく、人間としては受けとめるしかない事柄としてとらえ、自分を見失わないことです。そのうえで、ご主人や仲間の支援を得ながら、無理のない範囲で社会参加を心がけることです。
どのような人でも、社会と関わりを持つ限り、自分のすべてを誰もが快く受け入れてくれるということはありません。自分の中にある他人への不信感や期待感をなくし、自分の素直な気持ちを大切に、周りの人の役に立てるよう、無心に歩んでみてください。他人の言葉に動じることなく、1か月、2か月、3か月と、自分らしさを精いっぱい発揮してください。きっとあなたの味方が1人、2人と現れてくることでしょう。
途中でくじけそうになるかもしれませんが、そのときは頑張りすぎず、天を味方に、ご主人や仲間の力を借りて自分のいのちを輝かしてください。与えられたいのちを素直に生き抜いてくださることを祈っています。

平成29年2月号

 

Q:弟の再就職

実家の弟は、人付き合いの苦手なタイプです。大学を中退した後、親戚の紹介で就職し、5年ほど勤めましたが、仕事上のトラブルの責任を取る形で辞めてしまい、今はアルバイト生活です。母親は、弟のことをかわいそうに思うのか、現状に満足している様子です。私は弟がこのまま年老いていく姿を想像すると、再就職して結婚もしてほしいと思うのですが、弟は忠告を素直に聞き入れる性格ではないので困っています。今の状況で姉としてできるのは、どのようなことでしょうか。(30代・女性)

A:お母さんの味方になって

結婚され、実家を離れたあなたは、弟さんと実家が今後どうなっていくのかを案じておられるのでしょう。今はいいとしても、弟さんの将来の結婚や自立のことを考えると、「弟をなんとか再就職させ、母親にも安心してもらいたい」という気持ちで焦っておられるのでしょう。
ご質問からはお父さんの存在がうかがえませんが、お母さん一人のご苦労で育ててこられたのでしょうか。「弟は忠告を素直に聞き入れる性格ではない」とありますので、現時点で、あなたの心配はご本人に快く伝わっていないようですね。
今日の日本社会は二極化しつつあります。パートやアルバイトなどの非正規雇用で生活する青年男女が増え、至るところで就労支援や育児・結婚支援などが議論されていますが、問題の根は深く、特効薬があるわけではありません。これは国全体の問題でもありますが、他人頼みにするのではなく、究極的には一人ひとりが「自分の人生は自分で切り開く」という強い意志を持って、冷静に受けとめる必要があります。
そのことを了解したうえで、あなたの「弟になんとかやる気を出してもらい、人生を前向きに歩んでほしい」という思いについて考えてみましょう。
弟さんには今のところ、その意欲が湧いていないようです。大学を中退し、親戚の紹介による就職先もトラブルの責任を取って辞めたということですから、自己肯定感も向上心も乏しくなっているだろうと言わざるを得ません。
一方、あなたはお母さんに対して「弟を甘やかしている」と少し非難する気持ちを抱いておられるようですが、そうした批判的な思いを抱いたままで、誰かを前向きに励ますことができるでしょうか。そんな気持ちで忠告するあなたの言葉に、弟さんは素直に耳を傾けるでしょうか。
人が希望を持って前向きに歩み始めるためには、自分に少々自信がなく、外で失敗して落ち込むことがあっても、大きな心で温かく受けとめてくれる強い味方の存在が不可欠です。弟さんの身近には、そのような存在があったでしょうか。
先にお父さんのことを申しましたが、もし父親不在ということであれば、お母さんがその役目も果たしてこられたということですから、あなたはまず、お母さんの味方になって、共に弟さんを温かく受けとめ、支える態度で見守っていくことから始める必要があると考えます。
「強く生きる」という基本的な姿勢は大切ですが、その強さを引き出すのは、粘り強く温かい慈愛の態度です。その点を心に刻んで、弟さんに接していただきたいと思います。
人は自分の内側からやる気が湧いてこない限り、前向きに歩むことはできないのですから。

平成29年1月号